メリーゴーランド301

back  next  top  Novels


 カウンターに研二を座らせて、千雪はカレーを運んだ。
 千雪も横に座ると、大盛のカレーにとりかかった。
「美味い!」
「ほんまや。まあ、箱に書いてある通りやったら旨くできるんや」
 拗ねたように言う千雪に、研二は笑う。
「けど、あんだけ作ったら、明日もカレーやな」
 寸胴鍋にまだたくさん入っている。
「カレーならどんだけでも食えるわ」
 二人は笑い合いながら、たちまちカレーを平らげた。
「小分けにして、冷凍庫に入れとくから、食べるだけチンすればええ」
「わかった」
 研二は鍋からいくつかのタッパにカレーを分け入れると、蓋をして冷凍庫にしまった。
「風呂沸かしといたから、研二、入ったらええ」
「おおきに。洗い物したら入るわ」
 千雪はリビングのソファに座り、読みかけの本を開いた。
「何、読んでるんや?」
 研二は風呂に行く前に、千雪の読んでいる本を覗き込んだ。
「エラリークイーン。また全巻読も思て。まだ、国名シリーズの途中、ギリシアや」
「何冊あるんや?」
「四十冊くらいか?」
「こないだ読んどったんは何やった?」
「ヴァンダイン。あれも何べん読んでもおもろい」
 研二は本に目を落とす千雪を見て微笑み、風呂に向かう。
「ほんまに、千雪とこんな穏やかなんがええんやけどな」
 風呂に浸かりながら、研二はボソリと呟いた。
 先日、理香と口論していたらしいとスタッフに聞いた時は、何ごとかと心配になって問いただしたが、千雪の好きにさせておくのが一番いいのだと、研二は炊飯器の使い方や洗濯機の使い方を教えるようなこと以外、なるべく口を出さないようにしていた。
 書けないというのが気にならないはずはない。
 京助のことも当然気になっている。
 それでも、しばらくは見守るしかないと研二は思っていた。
「あとどんだけ、こんなしておれるんやろ」
 いつか、その日が来るだろうことはわかっていた。
 永遠にこなければええのに。
 空笑いして、研二はしばし目を閉じた。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
いつもありがとうございます