カウンターに研二を座らせて、千雪はカレーを運んだ。
千雪も横に座ると、大盛のカレーにとりかかった。
「美味い!」
「ほんまや。まあ、箱に書いてある通りやったら旨くできるんや」
拗ねたように言う千雪に、研二は笑う。
「けど、あんだけ作ったら、明日もカレーやな」
寸胴鍋にまだたくさん入っている。
「カレーならどんだけでも食えるわ」
二人は笑い合いながら、たちまちカレーを平らげた。
「小分けにして、冷凍庫に入れとくから、食べるだけチンすればええ」
「わかった」
研二は鍋からいくつかのタッパにカレーを分け入れると、蓋をして冷凍庫にしまった。
「風呂沸かしといたから、研二、入ったらええ」
「おおきに。洗い物したら入るわ」
千雪はリビングのソファに座り、読みかけの本を開いた。
「何、読んでるんや?」
研二は風呂に行く前に、千雪の読んでいる本を覗き込んだ。
「エラリークイーン。また全巻読も思て。まだ、国名シリーズの途中、ギリシアや」
「何冊あるんや?」
「四十冊くらいか?」
「こないだ読んどったんは何やった?」
「ヴァンダイン。あれも何べん読んでもおもろい」
研二は本に目を落とす千雪を見て微笑み、風呂に向かう。
「ほんまに、千雪とこんな穏やかなんがええんやけどな」
風呂に浸かりながら、研二はボソリと呟いた。
先日、理香と口論していたらしいとスタッフに聞いた時は、何ごとかと心配になって問いただしたが、千雪の好きにさせておくのが一番いいのだと、研二は炊飯器の使い方や洗濯機の使い方を教えるようなこと以外、なるべく口を出さないようにしていた。
書けないというのが気にならないはずはない。
京助のことも当然気になっている。
それでも、しばらくは見守るしかないと研二は思っていた。
「あとどんだけ、こんなしておれるんやろ」
いつか、その日が来るだろうことはわかっていた。
永遠にこなければええのに。
空笑いして、研二はしばし目を閉じた。
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