メリーゴーランド302

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 土曜日は朝から雨になった。
 紫紀は公一を連れて、午後三時過ぎに成田に到着した叔母のマギー一家をが迎えに行った。
 綾小路の屋敷に一週間滞在を予定しており、ヘンリーとマギー夫妻とテリーは学会への出席がメインの目的だが、弟のバーニーはしっかり旅行気分だ。
「実は京都にも行ってみようと思っている」
 バーニーは初めての日本に嬉しくて仕方がないようだ。
「じゃあ、公一、バーニーと一緒に京都行ける?」
 荷物をバッゲージに入れ、一家四人を乗せたグランツアラーのハンドルを握る紫紀は、助手席の公一に聞いた。
「あ、俺はいいっすよ」
「大学の方は平気?」
「もう全然、大丈夫」
 二人の会話から大体の内容がわかったらしく、ちょうど紫紀の後ろに座っていたバーニーが、「一人で行くから大丈夫だ」と口を挟んだ。
「日本語も少し勉強した」
 バーニーは日本語で言った。
「わかった。何かあったらいつでも呼び出してくれ」
 一家とは、紫紀が麗子や大とボストンに暮らしていた頃は叔母の家によく行っていたが、子どもだった兄弟は成人し、テリーは物理学研究室に進み、バーニーは東洋商事のニューヨーク支社に入社した。
 叔母のマギーはヘンリーと一緒に結婚式に来てくれた時に久々逢ったが、若々しい元気な女性だ。
 紫紀は賑やかで陽気な一家が好きだったし、小夜子はきっとこの一家とすぐに打ち解けるだろうなどと思いながらも、京助が果たして今夜の食事に現れるかどうかが気になっていた。
 速水から聞いた京助と千雪のことも放ってはおけない気がするし、特に千雪のことが心配だった。
 本当なら千雪も呼びたいところだったのだが、状況が状況だけに無理に呼ぶのは憚られた。
 京助とのことだけでなく、千雪の、書けないというのはスランプなのだろうと思いたいが、何かしらの精神的な原因があるに違いないのだ。
 いずれは事実を話さなければならないだろうが、小夜子にはとりあえず千雪は締め切りが迫っていて、とても今動きが取れないらしいと言ってある。
 次第に強くなってきた雨の中を、紫紀は一番町へと車を走らせた。
 綾小路の屋敷に着き、玄関前に車を寄せると、藤原が一家を出迎えた。
 公一と一緒に一家のトランクや荷物を車から降ろし、紫紀が屋内へと四人を案内すると、小夜子と両親が現れた。
 紫紀は小夜子をテリーとバーニーに紹介し、両親がリビングへと案内した。


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