明け方まで降り続いた雨は止み、今度は冷たい北風が通りを吹き抜けていた。
ゴミ出しに行ってきた千雪は、ドアを閉めるなり、「外、めっちゃ寒いで」と訴えた。
「師走やもんな」
呑気そうに研二が答えた。
「メシ、出来たで」
いそいそとキッチンカウンターにやってきた千雪は、鮭、卵焼き、味噌汁にご飯が並んでいるのを見て、「腹減った」と口にした。
そんな千雪を見て研二は微笑み、いつものように並んで朝食を済ませると、食器をシンクに持って行き、湯を沸かしてコーヒーを入れた。
千雪のマグカップの横にはヨーグルトが一緒に置かれた。
そろそろ出かける時間になったのを、カウンターの上に置かれたデジタル時計で確認すると、研二はコーヒーを飲み干して立ち上がった。
「洗い物はやっとくし」
「食洗機に放り込んどいたらええ」
セーターの上にレザージャケットを羽織ると、研二は玄関に向かう。
「千雪」
スニーカーを履きながら研二が呼んだ。
「何? あ、昼過ぎ、また店寄ってええ?」
千雪の問いかけには答えず、研二はもう一度、千雪、と振り向いた。
「お前、ちゃんと京助さんと話した方がええんちゃうか?」
「え?」
千雪は思いがけない言葉に、研二を見上げた。
「夕べ、聞こえてしもて」
何と答えていいか千雪にはわからなかった。
思考回路は停まったままなのだ。
「自分の部屋も一回も帰ってへんやろ?」
千雪はようやく、せやな、と答えた。
「かんにん、お前の好意に甘えてしもて、何もかもお前にやらせてしもて」
「そんなんは全然かまへんのや。どんだけ甘えてくれたかて俺は音を上げるようなことはない。ただ、放りっぱなしにしとると、何も前に進まんのやないか?」
千雪は頷いた。
「ほな、行ってくる」
「気いつけて」
研二を送り出すと千雪はしばらくその場に突っ立っていた。
差し当たってどうしよう、くらいも考えようとしていないのだ。
ただ、ぼうっと立っていた千雪は、やっと我に返ったようにリビングのソファまで戻って腰を降ろした。
「研二もええ加減、こんな俺、匙投げるわな………」
呟いて千雪は一つ大きな溜息をつく。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
