「ああ、自殺するようなタマじゃないだろ? 理由もないし」
「あってたまるか!」
笑いを含んだ工藤の言葉に京助は怒りに任せて携帯を切った。
「どないしたんです?」
「工藤の野郎が余計なことを言っただけだ」
三田村は小さく頷き、「せえけど、いったいどこ行ったんや、千雪」と呟いた。
それから携帯を見て、あ、と小さく喚いた。
「あかんわ、先方に連絡せんと」
「仕事しろ。何かわかったら連絡入れる」
京助はそう言うと先に部屋を出ていくので、三田村も慌てて後に続いた。
「俺も心当たり片っ端から聞いてみます」
三田村はガードマンのジョージと何か話している京助にそう言い残し、マンションの前からタクシーに乗った。
営業先に着く前に、携帯が鳴った。
「ああ、京助さんとこ来てみたけどいない。どこぞへ消えてしもた」
研二からだった。
「まさか、俺はてっきり京助さんとこに戻ったんやと……クソっ!」
苛立っているようすが伝わってきた。
「もう、三日になる………」
「にしたって、いろいろ当たってみるしかないやろ」
研二はまさかこんなことになるとは思ってもみなかったのだろう。
今頃青ざめているに違いない。
「京助さんに連絡するわ」
携帯の向こうで研二が言った。
「ほんで千雪を探す」
「はあ? 千雪を探すて、やみくもに動いたかて」
「とにかく、休み取るし」
電話を切ってから三田村はため息をついた。
誰が安めといっても仕事優先で聞かなかった研二は、千雪のためならいくらでも休むのだ。
「にしても、千雪のやつ、いったいどこ行ったんや」
タクシーの中で呟いた三田村だが、車がAI企画のビルの前に着くと、とりあえず仕事に戻ることにした。
京助はマンションを後にすると、千雪のアパートに戻り、千雪の行先に関係するような何かがないかと、あらためて部屋を見回してみた。
すると、やはり一度部屋を訪れたらしいことがわかった。
京助は千雪が部屋を空けていた間もちょくちょくここに出向いていたのだが、しばらくは何も変わらないようすだった。
だがクローゼットの中が少し変わっているのに気づいた。
おそらく冬用のジャケットを持ち出したのだ。
それにトレッキングシューズがない。
極めつけは小さ目のカートがなくなっている。
「どこか、目的があって行ったのか」
どうやら防寒が必要なところのようだ。
「なんで、何も言わずにどこ行ったんだよ!?」
京助はイラつき、吐き捨てるように口にした。
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