お互いバツイチ同士だからと、互いの両親や家族への紹介くらいにしておきたかったところだが、紫紀は大企業の次期CEOであり、小夜子はかなり規模は違うが老舗の呉服問屋の一人娘であったため、外野を放っておくわけにもいかず、婚約のパーティを開かざるを得なくなった。
「いやあ、原夏緒の作品展がお二人の縁を結んだとか、あちこちで言われましてね、まあ何しろおめでたい話なので、私としても嬉しい限りですよ」
家族や親族だけのパーティがまず行われ、さらに財界、業界、知人等々を招いての盛大な婚約披露パーティが立て続けに開催されたのは、六月も末のことだった。
そのパーティに至るまでにも、互いの家族同士での食事会に加え、結婚式についても打ち合わせをする必要もあり、小夜子はまさしくてんてこ舞いだった。
「どうしてこんなにややこしいことになっちゃうの? もっとシンプルにできないのかしら」
小夜子が言えば、「前の時はもっとシンプルだった気がするけどな」などと紫紀も口が出る。
「紫紀さんがもっとすぱっとこの辺でやめときましょうとか言ってくださればいいのに」
「小夜子さんの方だって、九州の大富豪だか四国のお大名だか知らないが日本中から集まってきたじゃないか」
「そんなことおっしゃったって、祖父の頃からのお得意様なのに、邪険にもできないわよ」
さらに二人ともが最初の結婚の方が非常にシンプルで披露宴もささやかなパーティだけで済ませたとのにと互いに言い合った。
「どうしてバツイチ同士の結婚なのにこんなに大騒ぎになるのかしら」
婚約パーティですら二人の思惑より遥かに大々的になっていた。
「だから、何で俺らまで駆り出されるんだよ!」
京助がついに文句を言い放った。
「京助は弟やから当然やろ。けど俺なんか原家の人間やないのに!」
千雪も続けて言った。
「あら、千雪ちゃんは家族のようなものでしょ。第一うち人数が少ないじゃない? 紫紀さんのところは大家族でらっしゃるのに」
「数なんかどうでもええやん」
パーティの控室でたまたま四人だけになったところで、皆が疲れ切って文句の言い合いとなった。
ただし、京助や千雪が文句を言いたくなるのもわからないでもない。
ただでさえ、論文だ、学会だ、に加えて解剖を要する事件が度重なり、京助などは無精ひげを剃る暇もなく飛び回っていた。
千雪と言えば、宮島教授の論文の手伝いとミステリー小説の締め切りに追われ、さらには映画のインタビューの撮影がこの時期に重なった。
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