メリーゴーランド33

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 その上に原の伯父から呼び出されて綾小路の家のことを色々聞かれた上に、小夜子を嫁にやる形になるのはどうなんだ、綾小路がいくら古い家柄とはいえ上から目線で仕切られるのは云々、と小夜子をまじえてああでもないこうでもないとの話し合いが何回か、さらには紫紀と紫紀の両親との話し合いにまで京助も千雪も駆り出された。
「俺らここいらでバックレるからな」
 京助が言ったと同時に、ドアが開いた。
「兄貴、自分だけバックレるとか、ナシだからな」
 顔を出したのは涼だった。
「いないと思ったらこんなとこで、主役が雲隠れしてるし。みんな探してるよ」
「主役って、なんか俺らいなくてもパーティは盛況じゃないか。仕事のパーティの方がずっと楽だよ。大体さ、マスコミが俺のこと東洋グループ次期総帥だとか、次期CEOだとか書きまくってくれたから、見ろよ、徳俊おじさんなんか、メチャ嫌そうな顔してるし。俺はパリ支社長なんだからさ。大体同族社長とか時代にそぐわないって。CEOとか株主総会が決めることだろ」
 紫紀が珍しくグチグチとこぼす。
 徳俊おじさんと呼んでいるが、早世した祖父には兄妹はなく、綾小路徳俊は大長の従弟で現在東洋商事社長である。
「いやでも、紫紀にい、ここんとこすごい業績残してるじゃん? パリ支社長と東洋グループ広報室長でさ。けど、どうするのさ、結婚してから、パリ支社長って、小夜子さん、仕事あるんでしょ? 大和屋の。単身赴任?」
 涼が心配そうに聞いた。
 そのことも散々、当然京助や千雪も同席させられた上で話し合われた。
「それも考えたんだけど、今、海外でも着物や着物文化が注目を浴びているだろう。そこで、大和屋のパリ支社として、向こうのファッションブランドと提携して着物素材や着物のデザインを取り入れた新たなブランドを作るという案があって」
 紫紀がさらりと説明すると、涼はすかさず、「紫紀にい、即席で考えただろそれ」と突っ込みを入れる。
「いや、だってさ、バツイチとはいえ一応新婚だし、少しは一緒に暮らした方がよくない?」
 と、紫紀は小夜子に同意を求める。
「それも面白いかもって思うのよ」
 小夜子も頷いた。
「小夜子さん、偶然にもパリに留学していたことがあって、フランス語も堪能なんだよ」
 今度は自慢げに紫紀が言った。

 


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