今さらながらに己の自分本位な行動と言動だったと京助は悔やんだ。
「千雪に、京助さんと話した方がええ、言うたんです」
研二の言葉に、京助は眉を顰めた。
「そしたら、あいつ、そうする、て言うたよって、てっきり、京助さんとこ行った思うとったんやけど」
「千雪が素直にその通り動くと思うか?」
すると研二がため息をついた。
「ひと捻りするべきやった」
研二も首を横に振り、あらためて後悔していた。
「今までの千雪なら、何でやて、まず言うたはずや。けど、ここんとこどっかおかしかったよって、俺も必要以上に言わんとおこ思て」
「ったく、お前は………」
京助は研二の過ぎる優しさに憤りすら覚える。
その時、研二の携帯が鳴った。
「今、京助さんと羽田に向っとるとこや。え、何?」
三田村が携帯の向こうで怒鳴っている。
「やから秋田や! 秋田におるらしいて、辻のやつが!」
もう一度、三田村は興奮を抑えて言った。
意外なところから千雪の消息が知れた。
「秋田やて?」
「とにかく、お前ら、秋田行くんなら羽田発十八時十分発、チケット抑えとくで?」
時刻は午後四時を過ぎたところだ。
「ほな、抑えといてくれ」
「おそらくホテルにおるやろし、あいつ車で行きよったみたいや。俺も今から羽田に向かう」
「わかった」
研二は携帯を切ると、今度は辻を呼び出した。
何故かわからないが、辻が何か知っているらしい。
「おう、研二、何や、千雪のヤツ、お前らに何も言わんと行ったんか?」
辻はすぐに出たが、いつものように何も慌てた様子もない。
「何でお前に?」
「ちょっと東北行きたいんで車欲しい言うて、あいつ連絡してきよったんや」
「東北?」
「あれや、芭蕉の足跡巡りとか言うてたで?」
「芭蕉………」
そのキーワードで東北にいる理由が研二にも、そのやり取りを聞いていた京助にも合点がいった。
法律畑を選んだ千雪だが、国文学者の父親の影響で、高校時代から芭蕉をはじめ古くは和歌の類にも興味を持っていて、芭蕉に関するエッセイなども雑誌に書いていた。
言われてみれば何だ、ということなのだが。
「あのやろ、何でお前にも言わねェで動くんだ!」
京助はしばらく渋滞が続く高速を睨み付ける。
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