メリーゴーランド322

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「俺のとこ来たよって、緑のアルファロメオとか勧めたんやが、目立ちすぎるから地味なヤツがええて言うたんやけど、ちょうど地味目なヤツはみんな先約があって、しゃあないから、俺のを貸したんや」
 辻は研二に経緯を話した。
「ほんで秋田行く言うたんやな?」
「秋田いうか、東北? 巡るて、日光とか平泉とか?」
「ほな、お前とは連絡とっとんのか?」
「いや、あいつ大抵携帯電源入れてへんやろ」
「せえけど、今、ホテルにおるて」
「俺のカーナビ、PCで走行管理できるよって」
 研二は納得し、また何かあったら連絡をくれるように辻に言い、携帯を切った。
 研二から辻の話を聞くと、京助は「ったく、あのバカ!」とまた怒鳴った。
 しかもこの車を使えばいいのに、わざわざ辻のところでなんか調達しやがって。
 確かに、いい大人なんだ、と工藤が言ったように、周りが心配し過ぎなところもあるかも知れないが。
 羽田に着くと、二人を見つけた三田村が足早にやってきて、チケットを渡した。
「結局、勝手に俺らが振り回されよるだけいう気もしないでもないけど、まあ、何も言わんと何日も行方不明とかはやめやて、千雪にきつう言うたってください」
 三田村はため息交じりに言った。
 京助は昨夜から教授に呼び出されて解剖を任されて寝ていない。
 無精髭をどうにかする余裕もなかった。
 京助の携帯が鳴り、速水が状況を聞いてきた。
「ああ。あのやろ、呑気に東北へ旅行中だ。携帯は切ってるし、黙って行くからみんなが空回りだ」
「どうやってわかったんだ?」
 京助は辻から車を借りて行ったらしく、辻がナビの管理をPCでやっていたから場所が分かったことを伝えた。
「そりゃひとまずよかった。でどうするんだ?」
「これから秋田に飛ぶ」
「うーん、何、目的があって行ったわけ?」
「芭蕉の足跡を辿るとか」
「あ、なるほど。だったら一人で存分に旅をさせてやればいい気もするけど?」
 速水に言われて、京助も心が揺らぐ。
 確かに心静かに一人で旅をさせてやって、戻ってきたらその時きっちり話をするというでもいいような気がしないでもない。


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