メリーゴーランド323

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「いや、けじめの問題だ。あのやろ、辻以外の誰にも何も言わずに行くとか、あり得んだろう。研二にも小夜子にも一言もなしだ」
「それはまあ、皆を心配させたことはよくないだろうが、そのうち落ち着いたら、千雪ちゃんの方から連絡するとか」
「しなかったらどうすんだよ」
「ああ、わかったわかった。行ってこい。頭ごなしに怒鳴りつけたりするなよ?」
 速水の電話を切ると、何を置いても京助と研二の二人は秋田行きの便に搭乗した。
 二人とも機上ではただ眠っていた。
 一時間のフライトはあっという間に過ぎ、二人はタクシーで千雪の泊まっているらしいホテルへと向かった。
「勢いで来てもうたけど、これからどないします?」
 ホテルが近づくと、研二が思いついたように言った。
「三田村が部屋取ってくれてたぜ」
「当日でよう空いてましたね」
「この季節、よほど大きなイベントでもない限りどこかしら空いているさ」
「せえけど、俺らが千雪に取り次いでくれいうて、素直に逢うやろか」
エントランスを入ってから、研二が気がかりだったことを口にした。
「まあ、任せとけ」
 京助はフロントに歩み寄り、辻と名乗った。
 研二は、あっと思ったが、さすがに三田村は抜け目ない。
 辻の名前で予約したらしい。
「辻様、黒岩様、お部屋までご案内します」
 スタッフが一人、カードキーを渡しながら言った。
「ああ、教えてくれれば自分で行きます。荷物もないし。その前に、同級生がここに泊まってるはずなんだが、辻が来てるって呼んでもらえませんか?」
 京助はフロントに言った。
 フロントからの電話で、辻が来ていると言われた千雪は、車のことで何かあったのかと思った。
「けど、携帯切っとったからいうて、わざわざここまで?」
 首を傾げながらロビー階へと降りた千雪は、エレベーターが開くとフロントに向かった。
「小林ですけど、辻が来てるて伺ったんやけど」
「はい、そちらにいらっしゃいます」
 フロントに背を向けてソファに座っていた京助と研二は徐に立ち上がった。
 振り返った千雪は二人を見て唖然とした。
「お、前ら、何で………」
 京助はニヤリと笑い、「よう、千雪」と言った。
 千雪を見ると、研二は思わず大きな溜息をついた。
「さあ、行くぜ」
 京助は千雪の腕を取って、エレベーターへと向かう。

 


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