研二は後に続いてちょうどきたエレベーターに乗り込んだ。
「お前ら、何やってんね、こないなとこで!」
上がり始めたエレベータ―の中で、千雪は喚いた。
「そいつはこっちの科白だ! てめぇ、何にも言わずに行方不明になりやがるから、あっちじゃ、大騒ぎなんだよっ!」
それを聞くと、千雪も、え、と口を噤んだ。
「たまたま辻が三田村に車の話で電話してこなけりゃ、もっと大ごとになってたとこだ!」
「携帯も切っとるし、誰も連絡取れへんて!」
京助が怒鳴ると、研二もいつになく険しい顔で声を上げる。
「俺はガキやないで? 二、三日一人で行きたいとこ行ったかて、そない騒ぐか?」
二人に咎めだてられた千雪は、言われたままにはならないとばかり言い返した。
京助は研二とともに文句を言う千雪を自分たちの部屋へ連れて行った。
「大体、二人して仕事放ってこないなとこまで、呆れるんはこっちや!」
子供のように連行された千雪は、部屋に入るなり喚いた。
速水の言うように目的があって動いているとわかったところで、千雪が何か言ってくるまで待つという選択肢もなかったわけではない。
それはわかっていたが、やはり情緒不安定の上、ともすると京助や研二を避けて連絡を取らないという可能性も加味すると、京助は気が急いてその選択肢は却下するしかなかった。
だが、こうやって言い返す千雪を見ると、少しは以前の千雪に戻りつつあるということか。
にしても、と京助は部屋を見回した。
研二と二人、今夜このスイートルームで過ごせとか、三田村のやつ、嫌がらせか。
「千雪、最近、小夜子さんにも連絡しとらんやろ? 心配してはったで? そらお前が何をしようと周りがどうこう言うことやないが、やっぱ、ひとこと、どこぞへ行くくらいはな。しかも携帯切っとるし、心配するないう方が無理な話や」
噛んで言い含めるような言い方で研二に言われると、千雪も眉を顰めて黙り込む。
わざと言わなかったといえばそうなので、そこは後ろめたくもあった。
特にこの二人には。
「例え二、三日でもや、どこにいるかわかれへん、誰も連絡取れへんやなんて、事故や事件に巻き込まれたんやないかとか、心配するやろ」
千雪は一つ溜息をついた。
「わかったて。これからまだあと二、三日は、新潟から富山、金沢行く予定や。正確な位置は辻に聞いたらええ。ここかて、辻のナビのGPSでわかったんやろ?」
投げやりな言い方で千雪は二人を見据えた。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
