メリーゴーランド327

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 いつのまにと研二は京助の行動力の速さに感心したが、少しでも安全性の高い車なら、まだマシかとは思う。
 にしても辻に言って、千雪の居場所を確認させておかなくてはと、ラインで連絡した。
「逢えたんや? よかったやん」
 辻は呑気そうに返してきた。
「まだこれから酒田や新潟や金沢なんかも行く言うとった。しっかり監視しとって」
「わかったわかった。せえけど、あの車、かなり高性能やで? いくら千雪の運転がヘタクソでも」
「そういう気がかりを煽るようなことを言うな」
「まあまあ」
 ラインを終えると、「辻に車の監視、しろって?」と京助は見ていたかのように聞いてきた。
「はあ、まあ、何が起こるかわかれへんし」
「ちょくちょく連絡しろって言っておけよ」
「言うときます」
 京助と研二もそのままタクシーで秋田空港へと向かった。
 とりあえず千雪の生意気な顔を見られたことで、よしとするしかなかった。
 今は一人で動きたいのだろう。
 京助は苦笑する。
「縁を切ってやる。無理に認めてもらおうとは思わない」
 父親にはそんなタンカをきったものの、千雪をもし失うようなことがあったら、それこそ地に足をつけて立っていられないだろうと、その足で研二の部屋へ向かい、千雪に、帰って来てくれ、と言ってしまった。
 そもそもは己の情けなさの極みだが、フン、俺なんざそんなもんさ、と自分のことはよくわかっている。
 所詮は強がって見せているお山の大将、根底が崩れれば終わりだ。
 千雪の意思を尊重する形で送り出したものの、実際は気がかり半分の状態で京助と研二は一路東京へと飛び立った。
 一方千雪は国道七号線を酒田へと軽快に車を走らせていた。
 晴天とはいえ風が強く、外は寒そうだが、時折樹々の向こうに垣間見える海が心を静かにさせてくれる。
 一時間足らずで酒田に入った。
 必ずしも芭蕉の足跡通りではないが、気の向くまま鶴岡へと移動し、芭蕉の句碑を観たり、ゆかりの地を歩き、たまに写真を撮ったりするだけだ。
 何しろ師走だから季節感が違う。
 この辺りでは夏の句が続く。
 ここから新潟県の村上、新潟を通り、直江津、日が暮れるまでに今の上越市まで行く予定だ。


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