メリーゴーランド331

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「ああ、あれ、辻に借りてな」
「辻くん? なんやそうなん。今晩一人やの?」
「うん、さすがに疲れてしもて、メシどないしょ思うとったん」
「え、ほな、ちょっと一緒に行こ? お座敷まで時間あるし」
「ええのんか?」
 菊子は笑い、へいきや、と言う。
「ほないこ?」
「あ、ちょ、待ってや」
 千雪は研二に念を押されたことを思い出して携帯を取り出すと、電源を入れ、小夜子を呼び出した。
「小夜ねえ、あの……」
 ただ京都に来ていることだけを告げようとしたのだが、全然連絡くれないし、心配するでしょ云々とまくしたてられた。
「うん、ちょっと東北をまわっとって。奥の細道行脚、いうほどのこともないけど、まあ、そんなもん」
「執筆のため? それで今どこなの?」
「今、京都や。東北旅行は終わり。明日、江美ちゃんとこ行ってお線香あげさせてもらお思て」
 すると小夜子は一呼吸おいてから、そう、と言った。
「江美ちゃんの子にも逢うてくるし。菊ちゃんから大きゅうなったて写真は送ってもろてるけど」
「わかったわ。東京にはいつ戻る予定? パリに行く前に会いたいし」
「うん、戻る時また知らせるわ」
 まだ何か言いたげな小夜子の電話を切ると、コートを取った。
「せえけど、菊千代はんと一緒にとか、こら、噂にならんか」
 カラカラと門を閉めながら、千雪は軽口を叩く。
「そらええわ。何か言われたら、うちの彼氏どすて言うたる」
 くすくす笑いながら千雪は菊子と一緒にゆっくり歩く。
「結局、どないなったん? 研二くんと京助さんと」
「三田村やな? 菊ちゃんにまでそれこそ触れ回りよって」
 やはり菊子にも三田村が何か言ってきたらしい。
「そら、みんな心配するわ。三田村くん、千雪が誰にも言わんと雲隠れしよったて、えらい勢いで電話してきて」
「ひとりでいろいろ考えたかっただけや。それに辻には車借りる時、東北を回るて言うたったんやで?」
「辻くんにだけ言うたかて、三田村くんみたいにおしゃべりやないし、辻くんが知っとるやなんて思わん」
 千雪は笑った。
「笑いごとやないわ。ほんで研二くんとはどないなってんの?」
「ほんまにおしゃべりやな、三田村は」

 


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