メリーゴーランド334

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「美味かった、一気に食うたわ」
 千雪が言うと、「ほんまや、帯が苦しい」と菊子が笑いながら言った。
「この後お座敷なんやろ? へいきなん?」
「まあ、踊ったりするよってな。せえけど、顔見世総見がやっと終わって、助かったわ。ここだけの話、うち、苦手なん、役者はん」
「南座の? 日本の伝統芸能やで?」
「うーん、前の代の方はよかったけど、今の方は、とかあるやん。ご贔屓さんの前では口が裂けても言われへんけど、好き嫌いはあるし、歌舞伎なんて、もう何べんも観させてもろて、台詞空で覚えとおる演目もあるわ」
「そら、すごいな。いっぺん見せてもろたことがあるけど、綺麗やったで、舞台も役者はんも」
「それより、千雪くんの話や、ごまかさんといて」
 菊子がビールを飲み干して、千雪をちょっと睨む。
「別にごまかすとか………」
 千雪は口の中でもごもご言うと、ビールを飲んだ。
「やっぱ、京助さんが黙ってへんやろ? あないに千雪くんに首ったけやってんも、そらガチ睨み合いちゃうの? 京助さんと研二くん」
 身を乗り出すように芸妓の化粧で菊子が迫る。
「ガチ睨み合いて、おもろがっとるやろ、菊ちゃん」
 にしても首ったけて、京助、そない思われとったんかいな。
「そらそうや。うちとしては研二くん応援しとるけど、京助さんもきらいやないしな」
 菊子はフフっと笑う。 
「せえけどな、高校生やったら、好きや嫌いやで済むか知れんけど、やっぱ人とつきあうて、周りを巻き込むことになるやろ。そういうの考えるだけでメンドイね」
 すると菊子はうーん、としばし考える素振りをした。
「好きやとか年関係あれへん違う?」
「こないだ、小夜ねえと京助の兄貴が結婚したやろ。披露宴やとか向こうの家族との食事会とか、メンドウ過ぎや」
「そやねえ、京助さん、ただでさえモテ男のサンプルみたいな人やし、兄貴が結婚したら京助さんに縁談とかきてるやろけど、京助さんの性格から言うても、千雪くん一本に絞っとるし、周りなんかどうでもええ思うてはるん違う?」
「それでええわけないやろ?」
「そんなん、京助さんが考えることやし、家族より千雪くんの方取るわ、京助さんならきっと」
 菊子は言い切った。
「研二くんかて、もう真由子さんと別れてしもたんやから、もう千雪くんだけでええ、思てるはずや」
「やから、そう簡単にいくもんちがうやろ」
 千雪は眉を顰めた。


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