脳裏には江美子の訃報が届いた時のことがフラッシュバックする。
さらにそれは数年前、父が倒れた時の情景に変わる。
あの時も京助は頭が働かない千雪をこうして新幹線に連れて来てくれて、何かとはげましてくれていた。
病院に駆けつけると、父は危篤状態が続いていたが、千雪を待っていたかのように、やがて帰らぬ人となった。
京助が傍にいてくれたからこそ、千雪は何とか動いていられたのだ。
江美子の葬儀の時にもスーツから何からてきぱきと用意して京都に千雪を連れて行きフォローしただけでなく、その後の同級生の集まりにも京助は裏方に徹して世話を焼いてくれていた。
もとより世話好きな性分はよく知っているが、同級生もみな感謝してくれていたように、頼もしい先輩でもあるのだ。
千雪の頭の中を、次から次へと京助と過ごした色んなシーンが現れては消えていく。
京助!
そないなこと知っとるわ!
わかっとる!
京助!
わけのわからないことを考えているうちにいつの間にか新幹線は東京に着いていた。
ホームに降りる時、足が震えた。
命がなくなるというのが、いかにあっけないものか、千雪は身に染みて知っている。
いやや!
京助!
行ったらいやや!
京助!
頭の中がぐちゃぐちゃのまま、千雪はコンコースを丸の内口方面に走ると、タクシーに乗り込んだ。
どちらまでと運転手に聞かれ、「第一虎ノ門病院」と答えた自分の声は妙に落ち着いていた。
十分ちょっとで運転手は病院のエントランスに車をつけた。
財布を出して支払いを済ませると、エントランスをくぐる。
くぐった途端、覚えのある匂いにまた足の震えを感じた。
おそらく救急外来だろうと見当をつけ、案内通りにその方向へ向かう。
救急外来の待合室が見え、女性が二人ドアを開けて入って行く。
あれは………。
クセでいつの間にか胸ポケットから出したメガネを千雪はかけていた。
こんな時でさえ妙なクセが抜けないのを自嘲する。
思い切ってドアを開けると、先ほどの二人の女性が振り返った。
「小林さん!」
千雪を見て立ち上がったのは、変わらないボブヘアに黒縁メガネの木村だった。
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