隣でハンカチで目を抑えているミスT大伊藤とともに京助が学部時代所属していた空手部のマネージャーである。
泣いている伊藤を見て、千雪は愕然とする。
まさか………。
「あ、今、まだ意識が戻らなくて。検査は済んだみたいですけど」
「あたしがいけないのよ。虎ノ門まで来てなんていったから!」
冷静に告げる木村の横で、伊藤が声を張り上げてまた泣いた。
「検査、済んだ、て………」
千雪はガチガチになっていた身体から少し力を抜いた。
「命に別状はないそうです。これから個室の方に移されるみたいで」
千雪のボソリとした問いに木村が答えた。
すると鼻をすすりながら、伊藤が言った。
「小林さんもお忙しいとこすみません、あたしがついてますから大丈夫です。身内しか付き添えないってことだし、今藤原さんが連絡を取るって出てったけど」
「あ………………、そ、ほな」
千雪は踵を返して、ドアを出る。
「あ、小林さん!」
木村が何か言いたげに声をかけたが、千雪は振り返らずにたったかエントランスに向かった。
エントランスを出てからも、手の震えがまだ止まらない。
命に別状ない。
よかった………。
京助……、よかった……。
それ以上の言葉は思いつかなかった。
千雪は大きく息を吐いた。
「よかった……」
震える膝に手をつくと、もう一度、千雪は呟いた。
どうやって部屋まで来たのか、千雪は自分のアパートに戻ってきていた。
中に入ると、千雪はソファまで歩いて倒れ込んだ。
しばらくして電話が鳴ったが、精神的にひどく疲れた千雪は深い眠りにおちていた。
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