藤原が京助の事故を知ったのは、午前八時半を回ったところだった。
昨日からの寒波で冷え切っていた上、早朝は都心でも雪混じりの小雨が降っていた。
「あのっ、京助さんの後輩の佐久間いうもんですけど、さっき京助さん事故で病院に運ばれて………」
連絡はT大法学部の宮島研究室にいる佐久間からで、学部時代京助の後輩として空手部に所属していたことから、家の電話番号を知っていたのだ。
藤原は驚いたが、容態と病院の場所を聞くと、すぐに綾小路家長男であり、東洋商事取締役でもある紫紀に連絡を入れた。
「容態はまだわからないようですが、今から病院に向かうところです」
綾小路の面々はたまたま紫紀と小夜子夫妻は博多へ出張中、両親は箱根に滞在していた。
「お父さんたちに連絡するのは京助の容態がわかってからでいい。俺らはこれからすぐ戻る」
紫紀はすぐに千雪に連絡を入れたが、携帯の電源が入っていない。
「一昨日、京都にいるって連絡くれたんだけど………」
小夜子は不安げに言った。
それからまた藤原から連絡が入ったのは、空港に向かう車の中だった。
「そうか。とりあえずこれから戻るから、何かあったら連絡してくれ」
紫紀が携帯を切ると、「どうなさったの?」と小夜子が聞いた。
「命に別状はないようだが、まだ意識がもどらないらしい」
すると小夜子は携帯で千雪を呼び出したが、やはり電源が入っていない。
「もう、千雪ちゃんたら、こんな時に、どうして電源入れてないのよ!」
不安と心配が入り混じった言葉を、小夜子は吐き出した。
「落ち着こうよ。ちょっとやそっとじゃくたばらない、頑丈なやつだから、京助は」
紫紀に諭されて、小夜子は眉を寄せた。
佐久間は伊藤と一緒にいた木村から事故の一報を受け、あちこちに連絡をしていたのだが、やはり何度かけても電源が入っていない千雪の携帯に業を煮やしていた。
とりあえず京助の友人である速水に電話を入れ、京助の事故のことを伝えるとともに千雪が捕まらないと告げた。
速水はちょうど空き時間だったので、すぐにタクシーで第一虎ノ門病院に向かっている時に、虎ノ門の会社にいるはずの三田村を呼び出し、京都にいることは昨夜菊子のラインで知っていた三田村が、小林家の家電に電話を掛けた。
病院の名前を伝えるとすぐに千雪は飛び出したらしいので、三田村も病院に向かった。
救急外来に行くと、泣いてばかりいる伊藤の横で木村から、京助は今ERで処置の途中だと告げられた。
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