メリーゴーランド345

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「今晩一晩は入院してちょっと頭を冷やすんだな」
 やがて医師が看護師を連れて現れて診察をすると、「とりあえず今夜一晩おとなしくしていてください」と京助に言い残して出て行った。
「お父さんたちには言ってない。怪我もこの程度で済んでラッキーだと思えよ」
 紫紀が言った。
「ったく、マスコミのやつら、まだ屯してるぜ」
 しばらくすると速水や三田村もやってきた。
 京助は周りを一度見回してから、フンと苦笑いし、「腹減った」と言った。
 みんなが笑い、一気に緊張が和らいだ。
 寒さを感じて千雪が目を覚ましたのはちょうど午後二時を過ぎた頃だった。
 起き上ってぼんやりと周りを見回し、状況把握にしばしの時間を要した。
 エアコンも入れていなかったことに気づいてエアコンを入れ、コートを脱ぐと、湯を沸かしてティーバッグでマグカップにお茶を入れた。
 ソファに座って一息つくと、そういえばと、ポケットの携帯を徐に取り出し、電源を入れた。
 ラインがやたら入っているし、着信通知もずらっと並んでいる。
 三田村をはじめ、小夜子、紫紀、菊子、佐久間、速水、研二からも入っている。
「連絡入れなあかんか」
 ボソリと呟いた千雪が一番最初に電話を入れたらしい三田村を呼び出そうとした時、携帯が鳴った。
「今どこにおるんや?」
 ちょっと怒気を含んだ言い方で研二が言った。
「アパートや。疲れて眠ってしもて」
 電話の向こうで大きく溜息をつくのが分かった。
「さっき京助さん、目覚ましたて、三田村から連絡あったよって、病院行った方がええ。小夜子さんや紫紀さんも探してはる」
「わかった」
「千雪、病院いっぺん行ったんやろ?」
「うん。命に別状はないていうから帰った」
「………そうか。俺もこれから病院行ってみる」
「うん」
 今朝、京助の事故の連絡を受けた時、京助がもし自分の前から消えてしまったらと、そんな恐ればかりに支配され、千雪は絶対京助に逢わなくてはと病院に駆け付けた。
 けれども伊藤らに京助の無事を知らされたことと、自分がついているから大丈夫、と伊藤に言われた時、すとんと思いは決まってしまったのだ。


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