「今しがた出て行ったぞ」
「いえ、俺、下で小夜子さんや紫紀さんとちょっと話しとったから」
研二は、すれ違ったんかな、と呟いた。
「あいつ、京都から今朝飛んできたみたいやけど」
「京都から?」
京助は怪訝な顔をした。
「三田村が、菊ちゃんから聞いたらしうて、東北から京都に戻って、江美ちゃんとこ行ったみたいで」
「ああ、江美ちゃんか」
「ええ、菊ちゃんが一緒に線香あげたて。千雪の中で区切りつけたかったんと違いますか」
「そうかもな」
親が亡くなり、兄妹同然に育った江美子までがいきなりいなくなったんだ。
傍からじゃわからない思いがあったに違いない。
同級生になら話せるんだろうが。
その時、またドアが開いて、速水が戻ってきた。
「あれ、千雪ちゃんは?」
「行き違いやったみたいです」
部屋を見回した速水に、研二が答えた。
「三田村がアパートに行ったけど、おらへん言うて怒っとった。やっぱ行き違いやったみたいで」
研二が笑う。
「それで、千雪くんはどこへ行ったんだ?」
速水は研二に尋ねた。
「ああ、ひょっとしたらまた京都に戻ったんやないですか?」
研二の言葉に、「車取りにいったんじゃねえのか? 京都に。辻から借りたやつ」と京助が付け加えた。
「そうや、きっと取るものとりあえず今朝、新幹線で来たんちがいます?」
「そうなんだ? しかし、ことごとく俺は千雪くんに避けられてる気がするぞ」
速水はブツクサと口にする。
「でなくても避けられてるだろ」
「うっせえよ」
「ほな、俺、仕事に戻りますわ。お大事に」
京助と速水のやり取りに、どうやら問題はなさそうだと、研二は暇を告げた。
「で、どうなんだ?」
ややあって、速水が口を開いた。
「何がだ」
「千雪ちゃんと話したんだろ?」
「話したって、まあちょっと話して、出てった」
「全くまだそんななのかよ。そういや、聞いただろ? 今朝千雪ちゃんが来た時、あのミスT大が余計なことを言ったから、千雪ちゃん、頭きてお前に会わずに帰っちまったんだ」
「は? 何だそれは」
「誰も話してないのかよ」
速水はイライラと言い放つと、佐久間が木村から聞いたことを順を追って話した。
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