「いつとか決まってるん?」
「ええ、三日にって」
「三日か。ちょっとわかれへんわ。江美ちゃんを偲んで同級生で集まることになっとるし」
江美子の名前を出して大嘘はつきたくなかったが、つい、千雪は言ってしまった。
「ああ、江美子さん。そうね、そういうことなら仕方がないわね。でも日程が合えばお願いね」
「わかった」
口ではそう言ったものの、小夜子には申し訳ないが、今回ばかりはパスさせてもらう、と千雪は心の中で謝罪した。
そういえばオヤジに言ったやなんて京助は言うたったけど、小夜ねえはそのことで何か言われたりしてへんのやろか?
それとも何や気難しそうなオッサンやったけど、京助の言ったことなんか一笑に付したとか?
男とやなんて世間体がどうとかでこっちに何か言ってこられても迷惑やしな。
俄かに千雪は妙な妄想に駆られイラついた。
もう別れました、やなんて言うんも言い訳がましい気ぃするし。
ってか、そういう輩を前にすると一言や二言は絶対きついこと言わんとおられんからな。
研二や三田村に指摘されなくても、極端に差別的な態度を取っていた教師を千雪はものの見事に弁舌でやり込めてしまい、お陰でかどうかその教師は異動してしまった。
以来極力抑えるようにしているが、速水とのやり取りなどまだ軽い方だ。
それより、まさか、原の伯父伯母に何か言ったりせえへんやろな。
ほんまにメンドいんはごめんや。
救いと言えば、小夜子と紫紀は一月中にはパリに赴くことだ。
小夜子が日本を離れてしまえば、あとは野となれだ。
アパートに一度戻ってから、千雪は研二のマンションに向かった。
途中、ワインを二本とチーズやソーセージなどを一緒に買った。
だがそのために久しぶりに降りた渋谷の街の喧騒に、千雪は頭痛を覚えた。
観光客はひっきりなしに訪れるが、京都の家のある界隈はこんな雑踏とは無縁だ。
九時半を少し過ぎた頃、パスナンバーを入れてエントランスを通り、研二の部屋のチャイムを押した。
「おう、入れや」
ドアを開けた研二は優しい笑顔で言った。
「ワイン買うてきた」
千雪は紙袋を研二に差し出した。
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