メリーゴーランド358

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 千雪の心の中に研二がずっといたことなんかわかっていた。
 だから研二から思いを逸らそうと無暗に千雪を振り回したりもした。
 だが、いずれは研二を選ぶのだろうと、頭のどこかでは思っていたのだ。
 それでも千雪を愛している。
 自棄になって酒を飲むくらいは、自分を勘弁してやりたかった。
 なのに!
「千雪はお前を選んだんだろ? 何で…」
 返せなどと言っておきながら、裏腹な疑問を投げつける。
「俺のせいか知れん……千雪は京助さんに置いて行かれるのを怖がってるだけや」
「何だって?」
「昨日、千雪が病院に駆け付けた時にそこに居た女の子が、自分がついてるから帰ってええて、千雪に言ったらしい」
「ああ?」
 京助はそんな話は聞いていなかった。
 結局、千雪と連絡がついたために、そんな些末なことを誰も京助に話したりしなかったのだ。
 だが、研二はたまたま三田村からそのことを聞いていた。
「千雪は自分がその程度の存在で許容されるような状況になるんが我慢ならんかったんですやろ」
「俺は千雪をそんな連中と同等にすら扱ったことはない」
「京助さんがそうでも、周りが勝手にそういう状況になることもあり得るんやないですか?」
「だったらいくらでも言ってやる!」
「それ、小夜子さんがとばっちり受けるんも、千雪は嫌なんや思いますわ」
 それを言われると、京助も二の句がつげなくなる。
「千雪は、そういういろいろなことを考え過ぎて京助さんに別れるやなんて言うたんや思いますわ」
 だとしても、千雪が研二を好きなのは紛れもない事実だ。
 だから研二を選んだ、それが千雪が出した結論ではないのか。
「もし京助さんが、昨日のように事故にあったなんて聞いたら、千雪はきっと飛んでいく。けど俺がその千雪の思いが苦痛でそれを阻んでしもたら、千雪が苦しうなる。それがわかっとるよって、俺には今、京助さんに千雪を連れて行ってもらうしかないんです」
 研二は穏やかな声で、そう告げた。


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