師走もそろそろ終盤に近づき、クリスマスに忘年会、ボーナスに懐が温かくなり財布のひもが緩むことを見込んでの年末商戦、世の中は一段と忙しなくなってきた。
師走になると法医学研究室も何故か忙しくなる。
京助は泊まり込みで解剖を終えた後、少し仮眠を取ると、大学に近い行きつけのスーパーで食材を買い込み、千雪のアパートの駐車場に置いていた車で自分の部屋へと向かった。
「ったく、せつばあさんじゃねぇが、四シーターじゃねえと荷物しまうにもめんどくせえ」
リビングのソファで何かプリントアウトしたものを読んでいる千雪にともなく、京助は口にした。
「ああ、こないだポシャッた車て、四シーターの方やったんか。そら難儀やな」
千雪は顔を動かすこともなく言った。
「やっぱ、日本でちょこまか走るんなら、ステーションワゴンかなんかじゃねぇとなあ」
行きつけのスーパーではスタッフとも時折無精髭でスエットの上下なんかで現れることもある京助は馴染みで、年配のおばちゃんスタッフは今日入った安くていいものなんかを教えてくれたりする仲なのだが、車はいただけないねえ、と言われている。
今日もまさに無精髭にスエットの上下でポルシェなんかを駐車場に停めて何日分かの買い出しをしてきたわけだが、長ネギや牛蒡などつかえそうになるのを後部シートを倒して押し込んだ。
「何、原稿?」
ひょっとして文章が書けるようになったのかと、京助は期待して千雪の手元を覗き込んだが、「作家志望の子のやつや」と千雪は答えた。
「作家志望?」
「これで三度目かな、半年に一篇くらいの割合で、俺ンとこに原稿送ってくんの。てより、ポストに直に入れていくんや」
「何だソレ、ストーカーじゃねえの?」
京助は眉を顰めて言った。
「いや、害はないし、俺なんかストーカーしてどないすんね。まあ、俺の小説のファンらしねんけどな。多分、若い女子や思う」
それを聞くと、京助はさらに怪訝そうな顔をした。
「アパート行ってきたのか?」
「うん、郵便物とか見たり」
テーブルの上には何冊もの文庫本が置いてある。
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