メリーゴーランド36

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「おい、やっぱ、出るぞ」
 パーティ会場に一歩入った途端、もうそこから先は前に進みたくなくて、ぼんやりと突っ立っていた千雪の腕を掴むと、京助はまた会場からそそくさと廊下に出た。
「ちょ、少なくとも京助は戻らんとあかんやろ?」
「もう充分だろうが! 帰るぞ!」
京助は取り付く島もない様子だ。
「日向野さんも来てはるで?」
 気になっていた千雪はつい口走った。
「あんなしつこい女、俺でなくても願い下げだろ? ウザいなんてもんじゃない」
「理事長も京助のこと探してはるんちゃうか?」
「いいか、まだわかってねぇようだな! 理事長だろうが何だろうがくそくらえ! 俺とつきあってんのはお前だろうが!」
 廊下の隅であれ、段々声高になる言い争いを、誰が聞いているとも限らない。
「ウッソ、それ、マジ?!」
 唐突に二人の会話に割り込んだ女性の声があった。
 振り向いた京助は、そこによく見知った女の顔を認めた。
「何だよ、理香か」
 えっと思って千雪が京助の横から覗くと確かに、大粒のダイヤのネックレスが映えるシックな黒のドレスに身を包んだ噂の華道家元の娘五所乃尾理香が立っている。
「何だよじゃないでしょ? そんな大事なこと、今まで黙ってて! 仮にも将来京助のワイフになるかもって人間に対して失礼じゃない?」
 あっけらかんと理香が言い放った。
「フン、ウソでもウソっぽいぞ、そのセリフ」
 京助が脱力した声で言った。
「ナニソレ!」
 ムッとしてから、京助の横から理香も千雪を見て、「って、ごめんなさいね、そんなこととはつゆしらず」とニコッと笑う。
「でも、本気? マジで千雪さんと?」
「マジもおおマジ! 半永久的にだ」
「やだ、まさか京助からそんな科白を聞く日がくるなんて」
 理香は大仰に驚きのポーズをとる。
「そんなん、京助が勝手に言ってるだけやから」
「こいつは日向野って女がしつっけぇもんだから、それが面白くなくて怒り心頭で帰るって言いだしたのさ」
 千雪がそこへ口を挟むが、京助はしれっと言うと、フンっと鼻で笑う。
「やだ、ダメじゃない、ビシッと言わないと」
 理香はからかい半分そんなことを言う。
「言ったさ。二度も面と向かって。何だあの女、ウザいにもほどがある」
「ふーーん………実はさ、あの子、それこそいろいろ噂あんのよね」
 わざともったいぶった風に、理香が言う。

 


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