上京してからは一人だということを痛感することも多くなり、メガネにジャージが板についてきてからはあまり人も寄りつかないし、千雪も率先して人に関わることはない。
京助は加勢がいようがいまいが関係ないのだ。
「にしたって、なんで親に言うかな」
千雪はまたその問題に辿り着く。
食事会の話をしていた小夜子は、人数合わせのことばかりで、京助のことについては何も言っていなかったのだが。
「大体、俺なんかにかまうからや……」
千雪はソファに深々と凭れて、そんなことを呟いた。
「何だって?」
風呂から出た京助は千雪の呟きを聞きつけて尋ねた。
「小夜ねえが、年明けに食事会に来いて言うてたけど」
「………行きたくなけりゃ行かなくてもいいぞ。俺もパスる」
缶ビールを飲みながらやってきた京助は、タオルで濡れた髪を擦った。
「お前はパスるわけにはいかんやろ」
それには何も答えず、京助は千雪の隣に座ると、缶ビールを飲み干した。
「千雪、話がある」
徐に口にした京助を、千雪は振り返った。
京助のそんな言い方は今まであまりなかった。
何だろう、と思う。
やはり自分とのことを親になど話したら反対された、ということだろうか。
別れるしかないということか。
それも仕方ないことだ。
もし、京助が別れないと言ったとしても、これ以上京助を矢面に立たせるようなことはしたくない。
瞬時にそんな考えが千雪の頭を過ぎった。
「何や、あらたまって」
京助はしかし言いにくそうに髭を剃ったばかりの顎のあたりを手でさすったりした。
「実は、その、留学って話があって」
それは千雪も予想外の話だった。
「教授がぜひって勧めてくれてただけじゃなくて、ほとんどお膳立てしちまってて」
「そら、ええ話しやんか。行った方がええに決まっとるわ」
案外軽い答えが返ってきたので、京助はようやく千雪を振り返った。
「医学部とか、特に法医学なんか、日本は遅れとるわけやろ? 行くべきや思うで」
「そうだよな、留学しないよりはした方がいいよな?」
京助は念を押すように聞いた。
「そらそやろ。ほんでいつから?」
「まあ、いつでもってか、何なら年明け早々にでもってことで、向こうのプロジェクトチームに参加しろって言われてるし」
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