メリーゴーランド373

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「モトサヤや」
 三田村が研二に千雪とのことを聞いた時、研二はそう言って笑った。
 折よくとは言い難いが、京助の事故の知らせに京都から飛んできた千雪のことやそれに伴った経緯を考えると、研二の出した結論を三田村はやむなしと頷かざるを得なかった。
 いずれにせよ千雪と研二のことは二人にしかわからないことがあるだろう。
 辻はわかっているのかいないのか、昔から同じように傍観を決め込んでいる。
 千雪には何も聞かないが、こうしてみんながまた集れることだけで良しとしなければ。
「留学? どこに?」
 シャンパンで乾杯して盛り上がったところで、千雪が年明けから留学することを切り出すと、まず三田村が聞いた。
「ボストン。休学してるの教授が心配してくれて、ほな、留学するんがええて」
「京助さんもか?」
「京助は博士課程で留学は必須やろて、即戦力がおらんよになるのだけが困るらしい、法医の教授は」
「環境を変えるのが一番ええんやないか? 向こう行ったらまた書けるようになるやろ」
 それについてはあまり口を出さなかった研二がそう言った。
「うん、そんな気ぃする」
「そら、お前が向こうにいるうちに遊びに行かな。夏休みに研二と行くわ」
 辻が宣言した。
「何でお前と研二? 俺もやろが」
 当然三田村が文句を言う。
「お前は桐島ンとこやろが」
 辻はスコッチをとぽとぽとグラスに注ぎながら言い返す。
「桐島と一緒にボストン行く!」
 三田村が手を挙げて強調した。
「ってか、部屋とかもう決めとんのんか?」
 研二が思いついたように千雪に尋ねた。
「京助のお母さんのうちがあるねんて。今は、留学してる弟の涼がそこにいてる」
「なるほ、そら何の問題もないやん。俺ら行っても部屋あるんやろ?」
 三田村はよっしゃと勝手に頷いている。
「知らんわ、そんなん」
 シャンパンで赤くなり始めた千雪が笑う。
 変わることをずっと恐れていた気がした。
 変わらないものなどないのだと理屈ではわかっていても、変わっていく事象や人や過ぎていく時に気持ちが追いつくことができずにいた。
 想いは確かにそこにあったのだ。
 それはだが、もう掘り起こさないでおこう。
 かけがえのない時を忘れることはないけれど。
「まあ、夏休みくらいまでには、お前らを案内するくらいにはなっとるわ」
「おう、頼もしいやんか、千雪」
 辻が千雪の肩に腕を回して笑った。


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