真っ白なレースの縁取りがあるそれを差し出したが、またバッグをひっかっき回す。
「ああん、ペンがない! 京助、持ってない?」
「んなもん、持ってねぇよ」
イライラしながら京助が言うと、アスカは「じゃ、これでお願いします!」と差し出したのは、ルージュだ。
「え………」
頬を赤らめて期待に溢れた眼差しを向けられると、千雪も無下に断ることもできない。
仕方なくハンカチとルージュを受け取ると、壁に持って行ってハンカチを広げ、ルージュで小林千雪と、楷書体で大きく名前を書いた。
「うっわーーー、ありがとうございます! 一生の宝物にします! 映画、すっごく楽しみです!」
またしっかり頭を下げると、アスカは京助の横を通りしな、「何かほら、あの子、日向野って、あんたのこと探してたわよ。ったくタラシなんだから!」と睨み付けながら会場に戻っていった。
「るっせえよ! あっちが勝手に追い回してるんだよ! 冗談じゃねえ!」
京助がそう言い返すと、アスカは、フンっと鼻息も荒くパーティ会場に戻っていった。
「変わった子やな。えらい親しそうやけど」
「言っとくが、あれは、オヤジとあれの祖父が同期で、ガキの頃からの知り合いってだけだ。しかも、見た通り俺とは犬猿だ。あんなのと噂を立てようとか、ムリもいいとこだ!」
千雪がボソリとアスカを目で追ってそんなことを言うと、京助は慌てて言い繕った。
「ツンデレってこともあるし」
「あのな、ツンだけでデレなんかねえよ! オラ、とっとと帰らねぇとまた誰かに………」
とまたドアが開くと、「ああ、こんなとこにいた!」と声を上げたのは涼だった。
「バックレようったってそうはいかないからな!」
「クソ!」
京助は思い切り舌打ちした。
ふう、と千雪は小さくため息をついた。
二年以上もふさぎ込んでいた小夜子が、新しい幸せを掴むだろうおめでたい話なのだから、千雪としては何を置いても祝福するべきところなのだろうが、このパーティに関してはとっとと終わらせてくれ、と心の中で叫んだ。
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