千雪が叫んだからではないが、パーティは間もなくお開きとなり、ようやく解放される、と肩の力を抜いた。
ただ、最後にこの豪華なカップルの顔を見ようと、去り際に一言二言言葉をかけていく客に、また張り付いたような笑顔を作らなければならない紫紀と小夜子には、お気の毒様、と心の中で声をかけた。
「もう、ええんやろ? 俺らは。ほんまに帰るで」
「今、エレベーターラッシュだぜ? ちょっと待った方がいんじゃね?」
千雪はイライラと眉を顰める。
そんな千雪に、祖父だろう紳士と一緒に会場を出たアスカがちょっと頭を下げたので、条件反射的に千雪も頭を下げる。
よもや彼女にまで、京助が自分らは付き合っているだのと言ってしまうのではないかとさえ思ってしまったが、大体、理香にしても何らかの言葉でごまかしようもあったはずだ。
それなのに、バカ正直に京助が認めたのは、何かしらの意図があってのことではと千雪は勘ぐった。
確かに初めから俺様で、自分の都合で千雪を引っ張りまわすやつではあったものの、京助が世話をやいてくれるのはいいが、束縛気味なもの言いにせよ、度を越していると思うことが千雪はたまにある。
何か余裕がない感じがする。
毎日顔を出さなくても、千雪はあの部屋にいる。
パソコンに向かっているか本を読んでいるかで、そんなに出歩くような性格でもない。
そんなに見張っていなくても、むしろ無精な千雪がどこかに行くようなことは少ないのだ。
なのに、京助は、いったい何を焦っている?
何となく、かえってお互いの気持ちのバランスが崩れている気がする。
ふと見ると、小夜子は義母となる涼の母佐保子と、同年配だろうか、背筋をピンと伸ばした和服の年配の女性と話をしていた。
おそらく若い頃は絶世の美女だっただろう、その人は凛とした佇まいで丁寧に品よく挨拶をして去っていく。
「千雪ちゃん、お疲れ様」
小夜子が千雪を見つけて歩み寄ってきた。
「小夜ねえこそ、お疲れ」
「ああ、今の方、綾小路さんのお隣にお住いの佐々木様。綾小路夫人のお茶のお師匠さんですって。私も流派が同じだからきっと佐々木先生にご指導いただくことになるわね。おきれいな方でしょう」
「せやな。何かを極めた人て、隙がないな」
「ああ、でももうパーティとか二度とやりたくないわ。万が一、紫紀さんとダメになっても結婚とか金輪際いや」
ボソリと小夜子が言った。
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