「これおいしい!」
万里子と千雪は並べられたクッキーを一つ一つ味見をしていく。
工藤は煙草を咥えて楽しそうに笑う二人を見やった。
「あ、工藤さん、鈴木さんに叱られる!」
万里子に指摘されて、工藤は慌てて煙草を口から離した。
「クソ」
「自分で宣言したんでしょ? オフィスは禁煙」
つい癖で咥えてしまったが、どこでも禁煙、副流煙ですら毛嫌いされるご時世に、オフィスで喫煙OKとはまずいだろうと、鈴木さんに最近宣言していた。
「今日は余裕ありなんやね、工藤さん」
「悪かったな。たまには俺も休みたいんだ」
煙草がないと手持無沙汰で工藤は紅茶をすする。
その時、マナーモードにしていた千雪の携帯がブルブルと振動した。
画面に浮かんでいる名前を見ると、千雪は出ないでテーブルの上に放っておいた。
「出ないの?」
「ええんや。ウザい後輩やし」
佐久間はきっと彼女である理沙子のインタビューの話でかけてきたのだろう。
続いて画面にラインのマークがついた。
佐久間かとも思ったが、一応見てみると、京都の菊子である。
何だろうとタップした。
『真由子さん、上の子も連れてずっと金沢の実家に戻ってたんンやけど、一週間ほど前に無事生まれたみたい。女の子やて』
研二の二人目の子供が生まれたことを知らせてきたのだ。
『ほな、なんか祝い考えンと』
『でも、どうもようすがおかしいし、研二くんとこのおじちゃんもおばちゃんも表情が硬いよて。で、もう研二くんに直にきいたんよ。そしたら』
『何や』
一端文字が途切れてから、また文字が表示された。
『真由子さんから離婚切り出されたて』
千雪の手が止まった。
『研二くん、一旦、金沢に真由子さんらを迎えに行って、向こうの両親とも話するみたいやけど、ほぼ決まりらしい』
『何でや? 研二、浮気なんかしてへんやろ?』
『ほんでも、真由子さんの精神状態もかなりきついみたいやし、また詳しいことわかったら知らせるけど』
『頼むわ』
何でや?
研二が何をしたいうんや?
「どうしたの? 千雪さん。険しい顔してる」
「ああ、いや……」
万里子が心配して顔を覗き込んだが、千雪は曖昧な答えを口にしただけだった。
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