メリーゴーランド52

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 子どもはよくモチーフになっているが、母親が二人の両親に承諾を得て描いていたから、他の子どもは描いていない。
 小夜子を描いた絵は二枚あったが、子供というより少女だ。
 一枚は肖像画で、夏緒が小夜子にあげたものを小夜子が展覧会のために貸し出したものだ。
 そういえばあの絵の前には人だかりができていたのを思い出した。
 今回の展示では肖像画にも焦点があてられた形になった。
 肖像画は描かれた本人が所有しているので、夏緒が肖像画を描いていたことも今回初めて観て感銘を受けたという評もどこかで千雪は読んだ。
 デッサンや本画を含めて何枚か千雪や父和巳の肖像もあった。
 どれもタイトルに名前があるわけでもないので、それが誰なのかは知る人ぞ知るだが、千雪の肖像は子供の頃からのものがいくつかあって、最後は千雪が中学の時のものだ。
「さあ、描いた本人にきかんとわかれへんな」
「ちょっと、描いた本人て、んな無茶な」
 確かに佐久間は千雪の小説のファンだと言うだけあって、それこそデビュー作から全て読み込んでいるし、まともな意見もくれるのだが、如何せん、千雪にまとわりついてくるのだけはカンベンなのだ。
 彼女である山井理沙子ともそもそも意気投合したのが、千雪の小説の話だったというから、二人して有難い存在なのかもしれないが、山井は千雪のことを色眼鏡で見ることはないことが分かったし、純粋に小説だけのファンでいてくれるから有難い。
 しかしこの佐久間に至っては、本人曰く、千雪のことを心配してくれている、のかもしれないが、先輩後輩という立場もあるし、千雪にしてみれば足を踏み込み過ぎでウザいことこの上ない。
「京助先輩は今日も研究室に籠りっきりでっか」
「さあ、ここんとこ立て続けに事件が起きてるからな」
 京助にも研二が上京することを話すつもりだが、何かしら引っ掛かりを感じるのは、千雪が研二に対しての思いを心の奥にしまい込んでいるからだろう。
「そういえば、あの理事長の姪の超美人との縁談どないなってますの?」
 千雪はそれを聞くとイラっとする。
「そうかて、京助先輩、あの真夜中の恋人とはずっと親密みたいやったし」
 もっとイラっとするキーワードを耳にした千雪は「んなもん、知るか!」と声を荒げて研究室の自分のデスクに戻る。
「先輩、名前くらい聞いたはるでしょ? 京助先輩の彼女のこと」
「しつこい! 知らん言うてるやろ!」
 千雪が怒鳴りつけても当の本人は全く堪えているようすはない。


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