メリーゴーランド55

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「まあ、それは研二のためには悪い話じゃないと思うが」
 京助としても千雪のことがなければ、研二のようなまっすぐな人間は嫌いではない。
「そもそも離婚の原因は何なんだ?」
 まともに聞かれて、千雪は戸惑った。
 菊子や三田村が言ったようなら、そもそもの原因が千雪にあるということになる。
「真由子さん、最近、ちょっとウツいうか、精神的に参ってたらしいて、研二の浮気を疑うようになってたて、菊ちゃんの話やと」
「研二が浮気とか、あり得ねぇだろ」
 京助はすぱっと言い切った。
「せやろ? 江美ちゃんのバカ旦さんやあるまいし」
「離婚しろってのはそっちの方だろ? 大体、家のための結婚とか、石器時代かっての」
 京助は江美子の話は正月にも耳にしたが、怒りを露わにした。
「せえけど、子どもが生まれるしな。菊ちゃんの話やと、子どもさえ生まれれば、旦さんなんかどうでもええくらい、江美ちゃんもおっちゃんらも喜んではったて」
「だったら、子どもが生まれたら、それこそとっとと別れりゃいい」
 千雪は苦笑する。
「俺もそう思うけど、俺らは外野やから、他人様の家の事情まで首突っ込むわけにいかんやろ」
「兄貴に手を回させて、大和屋から江美子の店に取引もちかけるとか」
「そない、簡単にいくか」
 千雪ははあ、とため息をつく。
「うーん、俺は、ビジネスはからきしわからねぇからな。昔っから、兄貴に言わせると俺は一つのことにしか目がいかねぇから、会社組織にはむかねぇとか、フン、兄貴はそこいくとガキの頃からオールラウンダーだったからな。学究肌の一面と組織を牛耳る手腕を持ち合わせていやがった」
 京助はきっちり自己分析もしているようだ。
「親は京助は会社に入れとか言わはらんかったん?」
「俺はな。高校の時に、親戚のオッサンを殴った時点で無理だとわかったんじゃねぇか? まあ、別に兄貴にも会社に入れとか強要したわけじゃねぇが、兄貴アメリカの大学院にいる頃から、研究室でただ研究に没頭してただけじゃなくて、会社を作って自分のプロジェクトをビジネスに利用して既に成功してたんだ」
「え、そうなん?」
 千雪は少し驚いた。
「ちょうど親父が身体を壊した頃、東洋グループの業績が傾きかけて、親父の腹心の嶋野ってのが兄貴を会社に誘ったらしい。こいつが結構切れ者なんだが、背後で動くのが好きらしくて、表舞台に出ようとしない変なヤツだ」
 京助は他人事のように淡々と説明する。


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