メリーゴーランド56

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「それで紫紀さん、日本に戻らはったん?」
「まあ、そのことが兄貴の離婚の原因になったみたいだがな。前のワイフ考古学者だぜ? 兄貴より学究肌で、東洋グループ関連の事業に関わるのはまず無理。話し合いの末円満離婚ってやつ」
 京助は軽く言うのだが、千雪は俄かに小夜子が心配になった。
「小夜ねえ、もし紫紀さんとダメになったらもう結婚とかしないとか言うてたわ。ほんまに大丈夫やろか」
「んなもん、やってみねぇとわかるわけないだろうが。小夜子は案外図太いところがあるみたいだし、うまくやれるんじゃね?」
「んな、いい加減な」
 軽く言い放つ京助を千雪はちょっと睨みつける。
「まあ、離婚とか、事情はいろいろあらあな。しかし研二んとこ、二人目が生まれたばっかだろ? 子どもはどうするんだ?」
 研二に話が戻ると、千雪もうーんと眉を寄せる。
「まだ小さいし、奥さんが引き取ることになるんやろか。研二、一人で上京するいう話やし」
「住むとこは決まってるのか?」
「芝さんが格安で貸してくれはるらしいから、そこは問題ないみたいやけど」
「なるほどな。兄貴と小夜子の婚約もそうだし、あっちもこっちもまさしく急展開だな」
「ほんまやな………」
 周りだけが変わっていく。
 自分は何も変わらないのに。
「時間が経てば、変わるもんもあるさ。んで、土曜は三田村と研二と三人で飲みだって?」
「まあ……。三田村も桐島にプロポーズしたら玉砕やったとかで、落ちこんどるし」
 すると京助が鼻で笑う。
「三田村、あいつ、軽過ぎるじゃねぇの?」
「距離置こう言われたとかって」
「相手はアーティストだからな。タイミングが悪かったんじゃね?」
「んならええけど………」
 他人の話に終始しているが、自分らはどうなのだと千雪は心の中で思う。
 京助かて、あのしつこい日向野って子だけやのうて、これからも縁談とか出て来るやろ。
 京助は京助で、研二の単身の上京という事実に今までにない動揺を隠せないでいた。
 空の缶を握ったまま、ぼんやり宙に視線を向けている京助に、「京助? どないかしたんか?」と千雪がたずねた。
「いや……さすがに俺も疲れた」
 京助は空き缶をゴミ箱に放り、冷蔵庫から缶ビールを二本出して千雪の前に置いた。
「そういや、腹減ったな。夕飯どうする?」
「腹減った。けど、こいつキリのええとこまでやっとかんと」
「出前でも取るか。ビザか鮨か鰻、何がいい?」
「ピザは却下」
 千雪はまたキーボードを打ちながら言った。

 

 


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