「そうだよな。なかなか駐車場も広いし気に入ってるのにな」
「っつか、俺の部屋やし」
千雪は軽く京助を睨む。
しかしもう、半同棲となって久しい上に、むしろ京助の方があのアパートや住人について詳しいし、さらに大家にまで受けがいい。
近所に住む大家夫婦には後輩の面倒をよく見ている先輩ということで取り入り、たまに土産を持参して機嫌を取るのも忘れない。
駐車場二台分も二年分ほど前払いしている。
大家も京助のことはそれこそマスコミが逐一説明してくれているので、どこぞの金持ちの息子だとかいうこともよく知っていて、まあ、とにかく、金払いがいいのが気に入られている一番の理由だろう。
千雪の家賃は口座から引き落としになっているから、更新の際に不動産屋や大家と顔を合わせる程度だ。
父親は千雪に金の心配をさせたことはないし、亡くなった後は生命保険金も入ったため、それだけでも適当なマンションに引っ越しても十分暮らしていけるはずだ。
ましてやベストセラー作家で、今度は原作が映画化されてギャラも入ることになっている。
金銭的なことだけなら、とうにあのボロアパートに住む必要もないのだが。
「どんな深刻なお話なのかしら?」
聞き覚えのある声に顔を上げた京助は、いつもながらのくどい美人顔の理香を怪訝な顔で見た。
しかもその後ろには案の定、速水のにやけた顔があった。
「あら、京助、この間恋人宣言してなかったかしら? 名探偵と」
理香は京助の向かいに座る千雪を見て、ちょっと驚いた風だった。
顔を覗き込まれた千雪は、胡散臭げに理香とそしてその後ろに立つ速水を見上げた。
「あらでも、あたし、あなたと一度お話してみたかったのよ。去年あたり京助があちこち連れまわしてたのってあなたよね? タレント? さっき小野万里子と話してたでしょ」
するりと理香は千雪の横に座った。
千雪はいかにも歓迎しないという顔で京助を見たが、京助はちょっと片方の眉を上げてフンと鼻で笑うだけだ。
お前、こうなるの、見越してたんやな?
千雪は心の中で京助を詰る。
「何の相談してたって? 真剣な顔して」
速水は京助の隣に腰を降ろした。
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