メリーゴーランド65

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 千雪はムッとして速水を睨み付けながら腕組みした。
「るせえな。重要案件について意見を交わしてたんだよ」
「何だよ、重要案件って」
 京助の答えに速水はさらに興味を持ったようだ。
「千雪のアパートだよ。駐車場もついて緑も多い、日当たりもいいあんな手頃でいい物件はそんじょそこいらにはねぇんだよ」
「あの、ボロアパートか? お前がもう何年も半同棲してるっつう? クソ狭いアパートがか?」
 それこそボロクソに言ってくれる速水を千雪はさらに険しい目で見やった。
「ちょっとちょっとナニソレ? 突っ込みどころ満載なんですけど。名探偵とはもう何年も同棲ですって? アパートって何? じゃあ、この子、謎の『真夜中の恋人』ちゃんとは二股ってこと?」
 理香が話について行けずに千雪と京助の顔を交互に見つめた。
「その『真夜中の恋人』ちゃんはだな……」
「その陳腐で救いようもないネーミング、考えたのが速水さんやいうことだけはわかるわ」
 堪忍袋の緒が切れるとはこのことだろう。
 千雪はニヤつきながら口を開いた速水の言葉を遮って、きつめの一言を浴びせた。
「え? 何? どういうこと?」
 理香は今度は千雪を見て、速水の顔を見やる。
「あれ、わかった? 結構評判になってたんだけどな? 気に入らなかった?」
「さあ、俺としては、ヘラっとしたその笑い同様虫唾が走るネーミングやけど?」
「感性の違いってやつかな? 俺としては君の探偵小説のタイトルに推薦したいくらい上出来だと思ってたんだが」
「心理学者には、文学的センスや語彙なんか無用の産物なんやね」
 嫌味の応酬の間で、「え、何? 俺って、え? 男の子?」と理香はまだわかっていないようすだ。
「二股じゃなくて、一人二役なんだよ」
 速水が言った。
「え? 一人二役?」
 理香がマジマジと千雪を見た。
「別に役やってるわけやあれへんし。外側だけ見た周りが勝手にそういうイメージを作ってくれはっただけやから」
「それに乗っかって、面白おかしく変人ファッションをやらかしてたくせに。お陰でこっちは見事に騙された」
「やから勝手に騙されたて、思う方がアホなんちゃう? 俺はどれも俺やし」
 ああ言えばこう言う千雪と速水のやり取りに、「うっせえよ。克也。いつまでも根に持ってウダウダと」と京助が口を挟む。


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