メリーゴーランド66

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「フン、お陰で、俺は、人を見る時、実はこいつ別の顔があるんじゃねぇかとか、余計な詮索せずに推し量れなくなった」
 性懲りもなく速水はまだ文句を垂れる。
「そら心理学者としてもええことやないですか? 少なくとも外見だけで判断せずに済むようになったんなら」
 大げさなことを言ってみるものの、もともと千雪としては、女の子に追いかけまわされるような目に合わずにすむようにという、ただそれだけの理由だったのだが。
「ちょっと、何? まさか、千雪ちゃん本人とか?」
 理香が目を丸くして千雪の顔を両手で挟むので、千雪は思わず後ろに顔を引いた。
「どういうことよ! こんな間近で見てもこの肌の滑らかさって、どういう手入れしてんのよ!」
 目尻の皴を日向野に指摘された理香にとって問題はそこだった。
「絶対美容液とか、何か使ってるわよね?」
「何ですか? それ」
「ちょっと京助!」
 千雪に手を離された理香は矛先を京助に向けた。
「この子、どんなクリーム使ってるの?」
「クリームって、顔洗う時は普通に洗顔フォームとかだろ? 石鹸で洗うこともあるよな?」
「そのあとのお手入れのことを言ってるのよ」
「お手入れて、タオルで拭くとか?」
 千雪は怪訝な表情を理香に向ける。
「化粧水とか乳液とかは?」
「化粧はせえへんし」
 まともに答えた千雪に、理香は今度は自分の顔に両手を当てる。
「あり得ない! 何もしてないってこと?」
 理香が声を上げる。
「せや、髭たまに剃った時、乳液みたいなの」
「髭、あるの?」
「そらまあ。そっちのお兄さん二人よりは薄いけど」
「信じられない! 何、この子!」
 べたべたと千雪に触る理香に、京助は剣呑な目を向ける。
「それで重要案件がどうしたよ」
 千雪の顔をジロジロ検分してる理香を放っておいて、速水が京助に聞いた。
「だから築四十年ほどにもなると、そろそろ大家が建て替えを言い出すんじゃねぇかって」
「そりゃあ、まあ、耐震はどうなんだよ?」
 珍しく速水がまともな質問をする。
「最初は一応クリアはしたんだろうが、木造だし、経年劣化ってものがあるから、今はどうかって話だ。俺としては木造ってのがなかなかいい味出してるし、愛着もあるんだが」
 しみじみと京助が言った。

 


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