メリーゴーランド77

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 イセアでは研二がというより、三田村がこれがええ、というのを研二が頷いて購入するというパターンで、研二が意見を言ったのはベッドの大きさについてだけだった。
「アホやな、お前のガタイでシングルとかあり得へん。あの部屋にもこっちが似合うとる」
 研二が九十センチ掛ける二百センチのベッドフレームにしようとしたところ、三田村が断固として百六十センチ掛ける二百センチのフレームを主張した。
「こんなん、お前が使こたら、小人のベッドに寝た白雪姫みたくなってまうがな」
「なんやそれ。わかりすぎるわ」
 三田村の比喩に千雪が苦笑する。
「わかったわかった。あとはテーブルがあれば、パソコン使こても、飯食ってもええやろ? 千雪の部屋にあったみたいに」
 研二が言った。
「あんな、小狭い俺の部屋を参考にしたらあかんで」
「ほんまや、俺があの部屋に似合うテーブル見つけたる」
 千雪がすかさず研二の発言を否定すると、三田村がまた張り切ってテーブルのコーナーへと先頭に立ってせかせかと歩く。
 研二にとっては手ごろな値段でテーブルと椅子が見つかり、カーテンや寝具も三田村の主導でてきぱきと決まった。
 まとめて配送を手配すると、「鍋釜は適当なモン用意するとして、家電も必要最低限用意せんとな」と研二がため息交じりに言った。
「やっぱ一人でも別所帯やと一通り揃えなあかんのが、メンドイな」
「それ、洗濯機と冷蔵庫、俺、最近買い替えたんや。古いやつお前が使うか思うてまだ取ってあるけど、使う?」
 三田村が研二に尋ねた。
「ほんまに? ほな下取りさせてもらうわ」
「ああ、そんなんええて。引っ越し祝いや下取り金は」
「けどな」
「実は俺、綾小路さんとこほどやないけど、金持ちなんや。親が買うてくれたもんやし、まだ使えんことはないから」
 三田村の言い草に研二は笑った。
「ほな、有難く頂戴するわ」
「俺は鍋釜とか、引っ越し祝いにさせてもらう」
 千雪も三田村に負けまいと宣言した。
「お前まで、ええわそんなん」
「俺はベストセラー作家やで? これでも。そのくらい当たり前や!」
 三田村と研二が同時に笑った。
「予算内に収まるか?」
「ああ、これで十二万くらいや。家電もらえるんやったらその分浮くわ」
 三田村に聞かれて研二が携帯で計算した。
「しかし、今時、現金て、まあお前から引っ手繰ろうとか思う輩はおらんやろけど」
「カードとか持っとるけど、あんまり使こたことないんや」
 千雪はその言葉に研二らしいと思う。

 


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