メリーゴーランド78

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「あ、せや、あとはテレビくらいいるか?」
 三田村がはたと思いついて口にした。
「うーん、あんまり見いひんけどな」
「いや、俺もそう思うとったけど、たまに映画とか見るやろ?」
 千雪が言うと、三田村が「ネットにつないで、ネット配信とかで見れるしな」と言う。
「まあ、テレビはまたそのうちにやな」
 研二が言うと、買い物はイセアだけで三時間もかからずに終わった。
「さあて、一件落着いうことで、ほな、研二の引っ越し祝いといくか?」
 三田村が飲む気満々で、宣言した。
「まだ引っ越し祝いには早いやろ」
 千雪が訂正する。
「ほな、引っ越し準備祝いや!」
「飲みたいだけやろ、三田村は」
 そう言って千雪は研二を見た。
「まあ、ええやないか。三田村も飲みたい気分なんやろ」
 研二は笑った。
 東京にいるここ数日、研二は三田村の部屋に泊めてもらうことになっていたので、一旦三田村のマンションまで行って車を駐車場に入れると、三田村はおごりだと言って、二人を近くにある気に入りの割烹料理の店に連れて行った。
「何や、お前にしちゃ、渋い店やな」
 個室に案内されると千雪がひとこと言った。
「たまにはええやろ」
 千雪は渋いと言ったが、色とりどりの器に盛られた料理がテーブルの上に所狭しと並ぶ。
 冷酒を楽しみながら、しばらく食べることに専念したあとはこれからの研二の話になった。
「明日、芝さんに店の方、案内してもろて、明後日はデザイナーの人と逢うことになってる」
「スタッフとかはもう決まってるのんか?」
 三田村が聞いた。
「できれば面接の時に俺にいてくれて言われてて、明後日の午後」
「フーン、そらお前がおらなんだらあかんやろ」
「菓子を作る職人とホールスタッフ、ずっと募集かけてあって、ホールスタッフは芝さんの持ってる劇団関係者がほとんどらしい」
「劇団なんか持ってはるんか? 芝さんて」
 意外な話に千雪も興味を持った。
「らしい。芝さん自身は芝居とか経験はないんやけど、若い役者を応援したいらしい」
「なるほどぉ」
 ちょっと酔っ払った三田村が必要以上に頷いた。
 しばらく店で飲んだ後、三田村のマンションに行くことになった。
「すごいな、ペントハウスいうやつやんか!」
 千雪はドアを開けて思わず声をあげた。


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