「お前の基準は何でいつも白雪姫やねん」
呆れて笑う千雪を、そや、と三田村がきっと見た。
「研二、秋のオープンやいうたな? オープンはまあ前でもあとでもええけど、芝さんに初の大仕事、土産にでけるやろ? 綾小路さんと小夜子さんの披露宴に菓子使うてもらえば」
「はあ?」
研二は怪訝な顔で三田村を見やる。
「せえけど、結婚式なんかいつになるとかもまだ決まってないんやで?」
千雪も眉を寄せながら言った。
「まあ、いずれは披露宴もせなあかんみたいなこと言うたはったし、話持ちかけてみるんがええかもな」
「うーん、まあ、なあ」
今一つ煮え切らない返事をする研二に、「そんな弱気でどないすんね!」と千雪が詰め寄った。
「小夜ねえはもともと研二の菓子を気に入っとる。それやったら披露宴に必ず使うてくれる気いするしな。まあ、披露宴やるんやったらやけど」
「やるんやったらてなんやそれ?」
三田村が突っ込む。
「こないだのパーティで懲りたらしゅうて、二人とも。式は海外で、とか言うとったし」
「やらんわけにはいかんやろ。そういう立ち位置におるんやから二人とも」
三田村が断言した。
「小夜ねえ、えらい人と軽く結婚とか了承してもうたな」
千雪の言葉にまた三田村が反応して、はああああとため息を吐いた。
「イチイチ反応すなや。お前らのは保留、ペンディングてだけやろうが」
「保留、いつまでやろ。一年? 三年? 十年とか………」
一人勝手に嘆いている三田村を放っておいて、千雪は研二に翌朝一番にジャケットを見に行く約束をして、それぞれの部屋に引き上げた。
「三田村、もう夜中の二時んなるで?」
千雪はドアを閉める前に、項垂れている三田村の背中に声をかけた。
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