翌日、渋谷にある三田村行きつけのブランドショップへ三人で出向き、三田村の見立てで購入したジャケットを着て、研二は芝との待ち合わせに向かった。
三田村と千雪もその場で解散し、千雪は地下鉄にのるべく、階段を降りた。
車内は日曜とあって、買い物や遊びに繰り出した人で混んでいて、エアコンも効いているのかという暑さだ。
研二と別れた帰り道は何やら心の奥がそぞろ寒いような思いにかられて、千雪はドアに凭れかかった。
研二が傍におるとか思て、つい、浮かれとった。
研二が上京してきたかて、もう高校生やないんや、あの頃みたいに付き合うこともでけんのやからな。
新しい仕事を始めるんや。
邪魔にならんようにせんとな。
千雪は心の中で自分に言い聞かせる。
俺は俺の、三田村は三田村の仕事をせな。
せっかくの研二の新しい門出だというのに、千雪は何かが胸の中につっかえているような気がして、ぼうっと暗い窓の外を見ていた。
和菓子処やさかの東京支店が有楽町の芝ビル四階に形を見せ始めるまで、研二は京都と東京を行ったり来たりして動き詰めだった。
引っ越し当日も結局本人は芝に呼び出されたため、運送業者と三田村と千雪が部屋を整えた。
引っ越しといっても京都から持ってきたのはいくらかの衣類と菓子に関する書籍類、それにパソコンくらいなもので、あとは購入した家具類を配送してもらっただけだ。
「研二がおらんくてちょうどよかったわ」
三田村がそんなことを言ったわけは、実は家電を買い替えたというのはウソで、引っ越し祝いにするつもりだったのだが、研二は新品だと申し訳なく思うかも知れないとの配慮からだった。
「お前がそないな気遣いするやなんて」
「るせ」
そういう千雪も、鍋釜類を引っ越し祝いにするといったものの、食器やキッチン用品を買うのに付き合ってくれた小夜子が引っ越し祝いにしてくれたため、千雪はもともと考えていたソファとテーブルを購入して引っ越し祝いにすることにし、配送されるのを待って、二人で据え付けたところだ。
菊子や江美子、安藤ら、京都の同級生らもみんなでまとめて餞別を研二に渡したらしい。
「あーあ、研二くんまでおらんよになったら、ほんまにこの街さみしなるな」
菊子がラインで千雪にぼやいていた。
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