「またいつでも遊びにきたらええ」
千雪はそう返したが、江美子のことが気になった。
「結構お腹おおきゅうなって、しんどそうやけど、生まれるの今か今かて楽しみにしてる」
ラインでは菊子も凄く楽しみにしている様子が伝わってきた。
「江美子さんにもお祝い用意しておかないと」
研二のキッチン用品はプロ並みの鍋釜や小夜子が気に入っている食器やカトラリーの類を揃えた。
そのついでに、江美子の出産祝いを見ようということになって、小夜子と二人でいろいろショップを見て回った結果、男女どちらでもOKなオーガニックコットンのベビー服や店のスタッフの勧めでブランケットやテディベアなどを購入した。
「七五三には可愛いお着物を送るわね」
疲れ切って手近なティールームに入ると、小夜子が言った。
「小夜ねえ気が早いわ」
呆れながら千雪はモンブランをつつく。
「あら、あっという間よ」
「それより、結婚式とか披露宴とか決まったん?」
途端、小夜子は眉を寄せた。
「もう、やなこと思い出させないで」
「やなことて、避けて通れへん一大イベントやんか」
「うーん、ねえ、だって、こんなに大変になるとは思ってもみなかったのよ。紫紀さんが、じゃあ、結婚してみましょうかっておっしゃるから、そうねって言っただけなのよ?」
千雪はふうとため息を吐いた。
「猛さんとの時はほんとに教会で式をあげて、その後はほら、猛さんのご家族とうち三人と千雪ちゃんだけでお食事会しただけだったけど、すごく楽しかったわ」
「そうかて、あの時、猛さん、翌日から海外に行くことになっとったから、会社の取引先も何も呼ぶ暇がなかっただけちゃう?」
猛のことを今もこんな風に幸せそうに話す小夜子が、なぜ紫紀のプロポーズにOKしたのかと、千雪は疑問にもなる。
いや逆か、こんな風に話せるようになったのは、紫紀さんと付き合うたからか。
「あら、だって、紫紀さんも麗子さんとの時は、お二人とも論文で忙しくて、市役所で誓いのキスで終わったみたいよ。立会人は市役所の職員だったんですって」
紫紀もここまで大きなイベントになるとは思わなかったのだろうか。
いや、あの紫紀のことだ、そのくらいはわかっていたはずだ。
割と仏頂面が多い京助とは真逆に、大抵笑顔を絶やさない優し気な紫紀の顔を千雪は思い浮かべた。
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