何だかだと文句は言っているが、とどのつまり小夜子も前向きなのだ。
というより、もうずっと前を見据えて歩き始めたのだ。
小夜子の言う難関を越えさえすれば、なのだろう。
小夜子は結婚することで、前に進む。
研二は家族と別れて、前に進む。
江美子は子供が生まれて、子供と一緒に前に進むことになる。
小夜子と別れ、帰りの電車の中で、千雪はまた考えずにはいられなかった。
なんやろな、俺はどないすればええ?
停滞しているような自分に焦りを覚える。
三田村も、最近は桐島のことでグチグチ言わなくなったものの、考えないではないだろう。
千雪もここのところこれでいいのかと、桐島ではないがそれこそ京助と距離を置いてみた方がいいのではないかなどと考えている。
京助はどうなんやろ。
そんなことを考えている千雪をよそに、京助は相変わらず週二日か三日は、千雪のアパートに出入りしている。
心のどこかに何かが引っ掛かっている気がするものの、部屋に来れば、京助は千雪に手を伸ばさないではないし、引き寄せられれば、千雪も安直に反応してしまう。
キスに溶かされるともうグダグダ考えていたあれやこれやが吹っ飛んで、身体は勝手に悦んで追い上げられて結局元の木阿弥状態だ。
居心地が良過ぎるのだ。
京助の傍にいると安堵感半端なくて。
って、俺、ほんまに甲斐性ナシやな。
それに、ソファなんかでやるな言うのに、あのエロアホんだら!
朝になって後悔しまくりな千雪だが、美味い朝飯を出されるといつの間にかその後悔もどこへやらなのだ。
クソ、メシで手名付けられよって、俺は!
自分で自分を呆れずにいられず、研究室でついキーボードを叩く指に力が入ってしまい、バチバチと音を立てていると、どこからか視線を感じて千雪は顔を上げた。
と、佐久間と目が合ったが、すぐに佐久間の方が目を逸らす。
アパートにやってきた佐久間が、たまたま研二と三田村と出かける千雪と出くわした時、コスプレのからくりをばらして以来、あれだけ先輩先輩とウザかったのがひっそりとしてしまい、千雪に何か用があっても、一歩後ろから恐々声をかけてくる。
まあ、そんなことはどうでもええ。
静かになってほんまにラクやし。
そんなある夜、小夜子と千雪連名で贈った出産祝いが届いたと、菊子と江美子が一緒にラインで千雪にビデオ通話してきた。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
