「おおきに! 可愛いし、オーガニックやし、テディベア、うちが欲しいくらいや! 小夜子さんにもお礼言うといて?」
江美子は何となく顔がふっくらと柔和な感じがした。
「わかった。お子のテディベアやからな? まあほな、生まれたら頑張った江美ちゃんにもテディベア贈ったるわ。予定日もうじき?」
「まだ二カ月以上も先なんやけど、もう身体が重うてかなわん」
「気いつけんと、転んだりせんように」
「うん」
子どもの父親であるバカ旦さんはどうしてるのか聞きたいのは山々だったが、何となく聞きそびれた。
「千雪くん、研二くんと逢うてる?」
横から菊子が顔を出した。
「それが引っ越し当日も研二、芝さんに呼び出されて、俺と三田村とで片したんや」
「そうなん? ねえ、どんな部屋? マンション?」
興味津々で菊子が聞いてきた。
「行ってみてびっくりや。俺の部屋なんかほんまにウサギ小屋やで。広いし、デザイナーズマンションで、カッコええんや」
「研二くん、もうそっち行ったっきりかな」
「落ち着いたら、いっぺん戻る言うとったで」
まあ、バカ旦さんがついていなくても、こうやって菊子やらが来てくれたりしているし、江美子の両親も初孫の誕生に浮かれ気味くらいらしいから、あとは生まれて来てくれるのを待つだけという感じだ。
江美子も菊子までもかけねなく幸せという顔をしていた。
子供か。
研二も子供と離れて暮らすのんはきっとつらいやろな。
こないだはつい、研二の前で口にしてしまったのだが、真由子は研二を嫌いになって別れたわけではないらしいし、やはり彼女が精神的に落ち着いたらまた家族で一緒に住めたらいいのに、と千雪は思うのだ。
昔、金沢で研二を訪ねて行った時、おそらく研二の部屋から出てきた女性が真由子だったのだろう。
あの時は、寂しくて悲しくて絶望のどん底という思いだっただけでなく、研二が選んだのは自分ではなくあの女性だったのだと思い知った悔しさでいっぱいだった。
冷静になって考えれば、もし仮に研二が一緒に東京の大学に来ていたとしても、いずれは同じ様な思いをすることになったに違いないのだ。
去年の春、京助と冷戦状態になって思いつきで京都に帰った時、偶然にもコンビニで身重の真由子を見た時、研二が彼女を心配そうにしていた時も、千雪は這う這うの体で家に逃げ帰っていた。
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