メリーゴーランド89

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「千雪ちゃんだって弟みたいなもんじゃない? お父さんお母さんだけじゃ心もとないのよ」
 あくまでも小夜子は譲ろうとしない。
 一見ふんわり優しい雰囲気の小夜子だが、彼女に近しい者なら、こうと思ったら梃子でも動かない頑固な一面があることをよく知っている。
「俺なんかてんで心もとないで?」
「うちは千雪ちゃん入れても四人よ? あちらはご両親に京助さん、涼さん、大さんで六人、それにこないだ伺ったら、執事さんとかベテランのハウスキーパーさんとかまでいらっしゃるでしょ? 絶対的アウェイで断然こちらが不利じゃない?」
 千雪ははあ、とため息を吐く。
 ほんとにこんな感じで大丈夫なんだろうかと。
「アウェイとか不利とか、決戦に行くわけやないんやから。執事さんは藤原さんていって、すごい慇懃無礼な雰囲気やけど、ええ人やで? それに息子さんの公一さんも楽しい人やし」
「やっぱり、千雪ちゃんの方がよく知ってるじゃない? こっちの味方になってくれるわよね?」
 結局は小夜子に押し切られてしまった。
 翌日の昼休み、所在なさげにテラスでコーヒーを飲んでいた千雪の前に、京助がどっかと座った。
 続いて一緒にやってきた速水もその横に座る。
「来週の土曜、食事会に行くのか?」
 唐突に聞いてきた京助に、あまり見たくもない速水の顔を見ることにもなった千雪はあからさまに胡乱な目を向けた。
「しゃあないやろ、三人じゃアウェイで不利だとかって小夜ねえに押し切られた」
「なんじゃそりゃ、するってえと、俺もやっぱ行かなけりゃならねぇか。教授のお供で学会だとか言って断ろうと思ってたんだが」
「お前が行かんて言うんなら、俺も行かんで済むのに」
「兄貴がうるさいんだよ。留学中の涼だって行くのに俺が行かないでどうするとか。涼なんか夏休みだろうが」
 それを聞いていた速水が「おいおい、お前ら兄貴と姉貴みたいな小夜子さんとのメデタイ話だろ」と口を挟んできた。
「何でそんな嫌そうなんだよ?」
「結婚するのは兄貴だろうが。わざわざ食事会なんかやらなくても、結婚してからだっていくらでもできるだろうが」
「小夜ねえもバツイチなのに、最初の時より仰々しいって、ウンザリしてる」
 京助が言えば、千雪もウンザリした顔で言った。
「まあな、たまたま財界の重鎮の次期CEOと老舗問屋の評判の美女がくっつくんだから、そりゃ大々的にもなろうさ」
「ああもう、そういうの、聞き飽きたわ」
 速水の説明に千雪は面白くなさ気に言った。
「大体、まだこれからだろうが、メインイベント」
 それを聞くとさらに千雪は眉を寄せる。


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