「あのコスプレって、悪の組織から身を護るための手段なの? コナンみたいに」
耳元で囁くように質問された千雪は言葉に詰まる。
「え、いや、そんな大それたものやないけど………」
まさか女の子に追い回されたトラウマで大学デビューしましたなんて、子どもに言えたものではない。
「ほんまは、金田一耕助を目指しとったんやけど」
「金田一耕助、知ってる! 横溝正史の名探偵だよね」
「そら話が早いわ。現実には、着物にハカマは動きにくいし、あんなんに落ち着いた、みたいな?」
「なるほど! おじいさんの弁護士の小説も面白いけど、小林千雪名探偵が活躍する小説って書かないの?」
そこでまたうっと、千雪は口を噤む。
大の向かいに座る京助がニヤニヤと鼻で笑っている。
「いやあ、まだ、それは考えてないわ。でも俺の小説読んでくれたんや?」
「もちろん、全部読んだよ。難しい法律の話とかあるけど、あ、御園生弁護士の弟子の海棠って、モデルわかっちゃった」
「ほんまに?」
「だって、女にもてるイケメンで言葉が軽いとかって、京助にい、そのまんまじゃん」
これには千雪も我が意を得たりと笑う。
「おい、言葉が軽いが何で俺そのまんまなんだ?」
京助が大に文句を言う。
「甥っ子はよく見てるってことやないか?」
そんな話で笑っていた千雪だが、俊一郎の言葉が耳に入って笑いが消える。
「次は京助さんの番ですねえ。女性にもてる方だからなかなか相手が決められないというところでしょうか」
結婚がキーワードの食事会だから、そんな話題も出てきて当然だった。
「本人もやりたいことが第一で、なかなか。いい方がいたらと思うんですが、こればかりは本人次第ですから」
「大学入学の頃から、千雪が京助さんにはえらくお世話になってますし、他人事ではありませんからね」
この話題になると、小夜子も涼も口を噤んだ。
京助に至ってはまさしく苦虫を噛み潰したような顔でデザートをつついている。
「せんだって、大学の理事長さんからいただいたお話はどうなさったのかしら?」
思いついたように、佐保子が苦労のない顔で京助に尋ねた。
「ああ、そういえばそんな話があったな」
大長も頷いた。
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