メリーゴーランド94

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「理事長の姪御さんで、おきれいなお嬢様だというお話でしたわね」
 無論弟の九条祐紀から佐保子も話は聞いていたのだろう。
「とっくに断りましたよ」
「あら、そうですの? 素敵なお話だと思いましたのに」
 佐保子が意外そうに聞き返した。
「理事長の姪できれいとかってだけで、こっちに押し付けられても困りますよ」
 京助が面白くもない顔で答えた。
「押し付けるとか、もっと言い方を考えたらどうだ。お前は子供の時からその傲岸さは変わらんな」
 怒鳴るわけではないが、少しきつめの口調で大長は京助を窘める。
「付き合っている人でもいるのか?」
 それには京助は無言のまま答えなかった。
 千雪がきっと京助を睨み付けたからだ。
「やりたいことが第一なんですよ、京助は」
 紫紀が柔らかに京助の言い訳を代弁した。
「そんな方がいらしたら、きっとご紹介下さいますわよね、京助さん」
 小夜子が京助を睨むように言った。
「まあ、京助さんのような方なら、そのうちいい方がきっと見つかりますよ」
 俊一郎が無難にまとめた。
 とりあえず京助が爆弾発言をしなかったことに、千雪は安堵した。
 京助の方は今にもブチ切れそうになりながらも、千雪の言うように、小夜子と紫紀の結婚が流れるようなことにならないとも限らないと、ぐっとそこは抑えきったのだ。
「帰るぞ」
 食事会がお開きとなると、大長が一杯どうですか、と原夫妻を誘っていたが、京助は「お先に失礼します」と俊一郎や正子に声をかけ、千雪を促した。
「公一に送らせましょうか」
 玄関を出る京助を藤原が呼び止めたが、「タクシー拾うからいい」とそっけなく答えて家を出た。
「よかったんか? お父さん、久々お前と話したかったんちゃう?」
「んなのいいんだよ、兄貴や涼がいるんだし」
 京助が不機嫌なのはわかっていたから、千雪もそれ以上は何も言わなかった。
「クッソ、何でパリくんだりまで行くんだよ」
 タクシーに乗り込んだ途端、京助が口にした。
「どっちかというと、パリの方が二人とも気が楽なんやないか? それに向こうでしばらく暮らすんやから向こうの人との付き合いの方が大切なんやろ」
「だからそれは兄貴たちのことで、俺らには関係ないだろうが」
「俺かて、パスりたいて小夜ねえにチラと言うたけど、却下されよったし」
 とにかく彼らのイベントがさっさと終わってくれればと千雪は思う。


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