メリーゴーランド97

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 紫紀ら三兄弟の父親大長はこの年代にしては背が高く、東洋グループ会長とあって七十代にして毅然とした雰囲気を持っていた。
 妻であり、末の涼の母親である佐保子は穏やかそうな人で、京助に言わせるとほぼ世間を知らないくせに、ボランティア団体の会長などに据えられている、小夜子に輪をかけた人のいいお嬢様だという。
 展覧会のパーティで初めて二人に紹介された時の千雪は、スーツこそ着ていたものの、例によって引っ掻き回したようなくせっけの頭に黒縁メガネをかけていた。
「おや、君は………今日は眼鏡ではないんだね」
 早速大長がパーティの時とは千雪の様子が違うと気づいたようだった。
「あ、はい」
「こうしてみると、小夜子さんとは姉弟のようによく似ているね。メガネをしない方が世の中がよく見えると思うよ」
 面倒な突っ込みはなかったので、つらつら考えていた適当な言い訳を口にしないで済んだ。
 紫紀の息子の大も千雪に興味を持ったようで、何か言いたそうな顔をしていたが、そこは年齢にしては身体も大きく大人びた表情で口を噤んでいた。
 執事の藤原に一行はダイニングルームの長テーブルへと案内された。
 角の席に大長、次の席には小夜子の母正子、紫紀、涼、京助が座り、大長の向かいには小夜子、隣には俊一郎、大長の妻佐保子、千雪、大と座ったが、紫紀とその両親、小夜子とその両親がメインというだけで、順序にはあまり意味はないようだった。
「あくまでもお近づきの印にということだけで、格式ばったものではありませんから、どうぞお気を楽にされてお召し上がりください」
 大長自身がしきたりや因習などが嫌いなたちだと京助が以前話したことがあったのを千雪は思い出した。
 気楽なというが、ソムリエエプロンをしたスタッフによって運ばれてくるコース料理は、今日のために呼ばれた五つ星レストランシェフの手によるもので、藤原に伴われて現れたシェフが挨拶して下がると、ワインも進んで誰もの口も滑らかになって来ていた。
 猛が亡くなってからは息をひそめていたかのようだった本来の明るさが小夜子に戻ると、その微笑みが千雪に母夏緒を思い出させることが度々あった。

 


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