ちょうど宴たけなわとなった頃、千雪の携帯が鳴り、帰省しているのかと尋ねてきて、宴の輪の端に腰を下ろしたのは辻誠だった。
クラスメイトではあったが、当時は暴走族の頭で、近隣の高校でもその名が知れわたっていたくらいだ。
さほど表立って悪さをしなかったというか、うまく警察沙汰になることを逃れていたとも言われているが、あまりクラスメイトと会話をすることもなかったし、学校では常に一人でいた男だ。
クラスメイトの方も、色々な噂やその雰囲気から近づきがたかったようだが、千雪は気にもせずに気軽に声をかけていた。
横浜の大学を出た辻も上京組の一人で、千雪もついこの夏まで会うこともなかったのだが、今は車好きが高じて横須賀で中古車のディーラーをしている。
「免許取ったよって、中古でも買うたろ思てるいうとったやろ」
「もちょい、早よ声かけとってくれたらな。京助が、俺の誕生日祝いやいうて、今朝、新車使わしてくれるて、鍵くれよった」
そう、今朝のことである。
チャイムが鳴るので誰がきたかと思ったら、京助の馴染のディーラーが手を回して京都に新車を届けてくれた、というわけだ。
「誕生日祝いて、居間のおかあちゃんの絵、買うてくれたやないか」
玄関の前に停められた高級外車に喜ぶより、ムッとしながら千雪は文句をたれた。
「だから、これは俺が買ったんだ。ただ、お前も使っていいと言ってるだけだ。車庫もいつものとこの横、借りといたぞ」
はあ、と溜息をついたものの、今さら京助のやることにイチイチ文句も言っていられない。
車をくれるなどと言ったら、千雪が怒るのはよくわかっているので使ってもいいなどと言う。
このやろう! 人の性格見透かしよってからに!
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