ペパミントの夜 4

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「ふん、生意気に、結構いい女連れてるじゃねぇか」
「帰る」
 唐突に立ち上がりかけたその美人の腕を引き戻し、「そう、妬くなって」とニヤニヤと京助はそのまま肩を抱いた。
「誰がや! 離せ!」
「ジタバタするとここでキスするぞ、千雪ちゃん」
 耳朶に触れるように言われて、小林千雪はムッとしながら口を噤む。
「してみ。ぶん殴ってやる」
「いいぜ、佐久間のやつに知られてもいいんならな」
 脅しめいた台詞に、千雪がぐっと次の言葉を飲み込み、しばし無言で佐久間の背中を睨みつけていると、それを感じたかのように佐久間が振り返った。
 千雪は顔を逸らすと、グラスに残っていたカクテルを無暗に空けた。
 京助の家の者に知られるのも嫌だったのだが、それより大学の者、よりによって最近妙に千雪のことに絡んでくるようになった佐久間になど知られるのはご免だった。
「………やから言うたやろ、こんな店連れまわしやがって、すぐおかしな噂になるで」
 何でこの男はこうも能天気なのだと、千雪は思い切り蔑視線をむける。
 御曹司、今度は男となんたら、なんてゴシップ記事でも書かれたら、こいつはどうでも周りが迷惑を蒙るだろう。
「ここの店のやつらには、しっかり俺らカップルで認識されてるぜ。さっきバレンタインのサービスだって置いてっただろ、ミントカクテル」
 飲みやすくて千雪もとっくに飲んでしまったが、テーブルにつくなり二人それぞれに持ってきた可愛らしくも華やかなカクテルはそういう意味があったのかと、今更ながらに思い知る。

 


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