「ねえ、見た? 素肌美人よ! 化粧っ気なし。一体どこの誰よ? 徹、知らないの?」
「へ………いや、初めて見るし、ほんま、美人や……」
もう佐久間の方など振り向きもしない美人にもう一度目をやる。
「ちょっと、見とれ過ぎ。私としてはあの美人の正体もだけど、名探偵には興味があるな」
理沙子が佐久間の顔を覗き込む。
「へ?」
佐久間は間抜け面を上げた。
「うちの雑誌、アラサー女性がターゲットなんだけど、これがあのムッサい風貌の名探偵なかなか人気なのよ。親しいんでしょ? 徹、今度紹介してよ。何か特集組みたいな」
「そらええかも。あの人、世間で言われてるん、えろ誇張されてるし、あのまんまやと彼女一人でけへんのやないかて、心配なんや」
出がけに彼女とそんなやりとりをしている佐久間の声が千雪の耳にも届く。
お前にそない心配されんでもええわ、ドアホ。
心の中で思い切り毒づくと、まだレジにいる京助を置いて千雪は外に出た。
「うわ………」
冬特有の強烈な風にぶつかって、千雪は少し足元がおぼつかない。
思ったよりアルコールが強かったカクテル二杯の酔いが今頃回ってきたらしい。
その間に追いついた京助は、千雪の肩を抱えてちょうど通りかかったタクシーを停め、千雪を先に座席に押し込めると、京助は自分の部屋のある麻布を告げた。
結局ぶすくれたまま京助の部屋に連行された千雪は、まだイラつきがおさまらない。
「佐久間のやつ、勝手に安請け合いしよって! 雑誌編集なんかに紹介されてたまるかって」
コートのままキッチンの冷蔵庫からミネラルウオーターを取り出すと、ゴクゴクと半分ほど飲み干した。
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