かぜをいたみ44

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「何だよ、行くって言っただろ」
 紫紀からとわかると京助は切り口上になる。
「祝いの品を持って馳せ参じればいいんだろ?」
 面倒臭げに言う京助に、「千雪くんはどうするって?」と紫紀が聞いてきた。
「行かないってよ」
「そうか、小夜子さんも説得したけど千雪くんは頑として聞かないって言ってたが」
「仕方ないだろ、千雪は家族でも何でもないし、行きたくないってんだから」
 すると紫紀はうーんと唸る。
「小夜子さんは弟みたいなもんだって言ってるし、ご両親も千雪くんのことを家族だと思って大事にされてるようだけどね」
「原はそうでも、うちは関係ないだろ」
「小夜子さんの弟なら、俺にとっても弟みたいなもんだと思ってるんだけど」
「千雪はそうは思ってないみたいだぜ」
「ちょっと千雪くんに替わってくれないか」
 京助は渋い表情のまま、「兄貴が替われって」と千雪に携帯を差し出した。
 千雪が眉を顰めて携帯を受け取ると、京助はバスルームへと向かった。
「はい、千雪です」
「悪いね、忙しいところ」
「食事会のことならお断りしましたが」
 千雪はきっぱりと言い放つ。
「いや、いつぞやの食事会が、君には何か面白くなかったのなら大変申し訳ないが」
「いえ、俺がどうのとかは関係ない思いますし」
 頑なに切り返す千雪に、「それが、実は当日、厄介なことになりそうなんだ」と紫紀が言う。
「厄介なこと?」
 千雪は胡乱気に聞き返した。
「小夜子さんがご両親に君と京助のことをばらしたことは聞いたよね」
 それを聞くと千雪はうっと言葉に詰まる。
 何か言われるのも嫌なので、もう当分、原家には寄り付かないようにしようと千雪は思っていた。
「小夜子さんの話によると、ご両親はそのことに大変憤慨されて、京助が君を誑かしたに違いないって、食事会で京助やうちの親を問い詰めるとか言っているようなんだ」
「はあ? 何だってそんな。俺のことやし放っといてくれて、言うたって下さい」
 全く冗談じゃない。
「放っておけるくらいなら、わざわざ小夜子さんのおめでたい席で喧嘩を吹っ掛けようとか思わないんじゃないかな。まあ、当人がちゃんと説明すれば、そこまでひどいことにはならないと思うが」
 京助が前に、紫紀のことをクエナイ男だと言っていたのを思い出した。
「紫紀さんみたいに策士やないと、企業のトップにはなれへんいうことがようわかりました」
「お褒めいただいて光栄だな」
「褒めてへんし」
 この人は速水なんかよりずっとたちが悪い。
「わかりました。ほな、顔だけ出します」
「それは非常に助かる。じゃあ、お待ちしてるよ」
 携帯を切ると、千雪は一つ溜息をついた。
「ったく、メンドイ!」
 吐き出すように言うと、缶ビールの残りを一気に飲み干した。

 


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