「俺も聞きてーもんだな? え? 千雪」
皮肉っぽい京助の言葉が追い打ちをかける。
『白昼堂々、アスカ新恋人と激写』などというキャッチコピーつきだ。
「ただ送っていっただけや」
千雪はムッとした顔のまま言った。
「ほう? それで? この二人に何があったかにマスコミやらファンは興味があるわけだ」
「うるさいな! お前こそ、こういうのん常連のくせに」
千雪は講英社の写真週刊誌を京助に突き返す。
「あーっつ! SNSでも大騒ぎでっせ!」
佐久間がわざわざ携帯でググった画像を千雪に見せる。
「ほんまにうざいわ」
よもやということも考えないではなかった。
留学から帰ってきたと知って、アスカが千雪の部屋を訪ねてきたのだ。
コンシェルジュは以前アスカと千雪が京助の部屋に来たことをおぼえていたらしい。
冗談じゃないとアスカを家まで送っていくと、ちょうどアスカの両親が京都から帰って来ていたため、引き止められてお茶をした、だけなのだが。
アスカの父親がたまたま千雪の父親と同じK大の教授で、生前話したこともあるらしい。
ともあれ、普段失念していることもあるが、アスカは人気俳優なのだ。
今では若手人気女優ベストテン内に常にランクされるほどの。
迂闊だったというしかない。
ちょっと工藤にも申し訳がない気もしたが。
夜には案の定工藤から電話が入った。
「ひょっとしてアスカさんの件?」
「もしバレたらどうするつもりだったんだ! バカヤロ!!」
工藤も相当怒っている。
「はあ、確かに俺の不注意やわ、彼女にも謝っといてください」
「アスカなら、むしろ話題性で却って好都合だが。多部がびっくりしてこっちに連絡をよこしたんだ」
「多部さんが? ああ、あの人講英社やったっけ」
多部は千雪の編集担当者で、そういえばと原稿を催促されていることを思い出した。
頭から沸騰しそうな多部の顔が目に浮かぶ。
「問題はお前の正体だ。マスコミうちにも押しかけてるんで、明日記者会見で、アスカに適当に説明させるが、妙にあの写真のお前に興味持つやつらがうろついている。気をつけろよ」
翌日盛大にフラッシュがたかれる中、たくさんのカメラの前で、アスカは言った。
「彼、パリのボーイフレンドなんです。初めて日本にきてくれて、久しぶりに再会して」
アスカは悪怯れもせず、シナリオどおりに言葉をつなぐ。
「ウーン……今は、とても大切な存在って言うか……もし、結婚という形にはならなかったとしても、ずっと大事な存在でいると思います」
最後の台詞はシナリオにはなかった言葉だったが。
「何、何、実はそーゆーこと?」
流がピュッと口笛を吹く。
「あんな週刊誌なんか気にせず、ママもパパもいつでもまたゆっくり遊びにいらっしゃいって言ってるのに、あれからちっともうち来てくんないし」
アスカは悪びれもせず、そんなことを言う。
「俺はアスカさんの子守やないで」
千雪は溜め息をつく。
「両親公認ってわけ?」
俊一がニヤつく。
「なんならいっそのこと記者会見でもやっちまえばいい」
周りも面白がって一緒に騒ぎだした。
勝手にしてくれ、と千雪はグラスを空ける。
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