かぜをいたみ78

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「そういや、また来週のゲーノーニュースに久々大センセーも登場するしな」
 工藤の発言に、また眉を顰めて千雪は口をつぐむ。
「何よ、それ?」
 アスカがすぐ反応する。
 いつの間に手に入れたのか、工藤が投げてよこしたゲラには、財界のパーティのあとという説明付きで、今にも車に乗り込もうとする美女と、ドアを開けてやる京助の写真。
 『財界のプリンス綾小路京助の新しいお相手は』というコピーがデカデカと載っている。
 その新しい相手という美女は、先頃TVなどで騒がれているお嬢様タレント、美咲里乃。
 梨園の大物、中村清右衛門の娘で、アメリカ帰りという、何の不自由もなく育ったアクのない美女だ。
 ちょうど今売れっ子の流とはドラマで共演もしている。
 京助とは家柄も釣り合うとか、業界関係者のお墨つきまである。
 その写真に写っている夜、京助の帰りが遅かったのを千雪も知っている。
「里乃のやつ、いつのまに! ドラマの時なんか、微塵もそんなそぶりなかったのによ」
 流がブツくさ文句を言う。
「何だ、振られたんだ、流」
 とはアスカ。
「言ってろ! 誰があんな生意気な女!」
「あら、里乃って生意気なの?」
「お前には負けるがな」
 その時、千雪のポケットで携帯が鳴った。
 千雪は隅の方に移動して電話に出た。
 中古自動車を扱う『ピーターパン』の店長、辻からである。
「ああ、やっぱきた? うん、それでええわ」
 案の定、例の事件の捜査で、木村ちひろ、のことやプリペイド携帯などについて聞きに来たという。
 辻は、「木村は知り合いのダチで、携帯がないっていうんで、たまたま買った携帯くれてやった、でええんやろ」と説明した。
「ああ、それでええ。まあ、それ以上は何も出えへんしな。ピザ屋のバイクはどや?」
「きれいに塗り替えて近くのピザ屋に売りつけたわ。証拠隠滅」
 辻は笑った。
「クラウドの方、加藤のとこまでは辿り着かれへん思うけど」
「ああ、最終的に横浜のインターネット喫茶でTHE ENDや言うとったで」
「ほなまあ、報酬はきっちり支払うよって、加藤にもよろしゅう言うとって」
「おう、わかった」
 電話を切ると、工藤が後ろに立っていた。
「お前、何を企んでる?」
 苦み走った顔がさらに険しい。
「別に大したことやあれへん」
 千雪はさらりとかわす。
「クラウドがどうとか、言ってたろうが」
 気になるキーワードに、工藤は耳をそばだてていたのだ。
 実は渋谷の方から工藤に、良太をボコボコにした連中が捕まったという一報が入ったのは今朝だった。
「千雪くんから、広瀬くんが暴漢に合ったらしいって聞いて、所轄が『ルーファス』って店も捜査したんですが」
 ひょっとしたら新宿署あたりが乗り込んでくるかも知れないと思っていた工藤だが、渋谷に話が行ったとは思わなかった。


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